【完全解説】30年中20年が暗黒期「ポケモンカード」の誕生~復活までの歴史 1985~2024

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【ゲーム会社史】そのゲームを作ったのはというyoutubeチャンネル様に、【完全解説】30年中20年が暗黒期「ポケモンカード」の誕生~復活までの歴史 1985~2024という動画の台本を提供しました。

この記事は、その台本の ( 初稿の ) ベタ貼り記事です。文字情報でザザっと追いたい方用です。

実際の動画では投稿主様の方で一部内容修正されているので、動画にはない情報も含みます。補完関係になっているので、流し読みでも構わないのでご覧いただけたらと思います。

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はじまり

みなさんはポケモンカードの歴史をどれだけご存じでしょうか。実は『ポケモンカードゲーム』は、初代『ポケットモンスター赤・緑』と同い年。1996年から展開されており、ポケモン関連作の中でもゲーム本編の次に歴史が長いとされています。ここ数年は、ポケカバブルなる現象が起こって話題が再熱しており、昔ポケモンカードゲームを触っていたなぁと懐かしい気持ちになった方も多いのではないでしょうか。この動画では、もうすぐ30周年を迎えるポケモンカードゲームの歴史を徹底解説いたします。

ポケモンカードゲームはTCG(トレーディング・カード・ゲーム)というジャンルのゲームです。TCGというのはTC(トレーディング・カード)が発展して出来上がったものですので、まずはこのジャンルの成り立ちを簡単に解説しようと思います。

ゲームになる前のTCの歴史はかなり古く、人々の収集癖を刺激してきたカードという意味ではトランプが最古のTCと言われています。では最古のトランプはいつできたのかいうと、今から1000年以上前の中国「唐」の時代だと言われているようです。そこからトランプはヨーロッパに伝わり、絵柄も多様化して個性的になり、我々がよく知るA~Kまでの13枚、そしてスペード・ハート・ダイヤ・クラブ(この順が強い順らしい)の4つのスートからなる計52枚1デッキの形になったと言われています(ちなみにイタリアなどはJ・Q・Kが8・9・10相当として扱われる40枚1デッキが一般的のようで、必ずしも52枚1デッキが世界共通ではないそうです)。ジョーカーは1860年頃にアメリカで考案されたのが初めてだとされていますが、実はこの頃のアメリカはちょうど野球がプロスポーツになった頃でもありまして、ジョーカーとほぼ同時期にプロ野球選手を模したカード『ベースボールカード』も生まれました。1880年頃にはタバコ箱の厚紙(ポケットの中でタバコが折れてしまわないようにタバコ箱を補強する厚紙)代わりとしてベースボールカードが取り扱われるようになると、その厚紙目当てにタバコを買う客が現れるようになり、どこのタバコ会社もこのやり方をマネるようになって一気にベースボールカードは広まっていきました。ちなみに2024年現在、最も高額で取引されたTCとされているのが1952年に発売されたベースボールカード。名門ヤンキースで1956年に三冠王を獲得し、ワールドシリーズで通算18本塁打の最多記録を持つMickey Mantle選手のカードは、2022年に1260万ドル(約17億5000万円)という超高額で落札されました。それまでのスポーツ関連のコレクターズアイテムの最高額記録が、サッカーのマラドーナ選手が「神の手」ゴールを決めた試合のユニフォームで12億円だったと言います。実際の選手が使っていた道具ではなく、知らない人が見たら何の変哲もないカードが史上最高額を更新するというのは、まさにTCファンのすさまじい収集癖を如実に物語っていると言えるでしょう。

さて話を戻して、日本のTCの歴史に入っていきます。戦後間もない頃には芸能人のブロマイドが流行したと言います。1973年には日本のプロ野球選手のカードが付属する『プロ野球チップス』が発売され、アメリカのベースボールカードと同じように人気を博しました。さらには1980年代後半に入るとビックリマンシール、1990年代に入るとドラゴンボールのカードダスが一気に流行り、日本におけるTC文化が浸透していきました。そのようにしてTC「G」が受け入れられる下地が整ったタイミングで、まるで図ったように登場したのが、日本初の本格TCG・ポケモンカードゲームでした。

ポケモンカードゲーム誕生

ポケモンカードゲームは1996年に生まれた初の国産TCGですが、世界初のTCGはと言うと、Wizards of the Coast社が1993年に発売した『マジック:ザ・ギャザリング(Magic: The Gathering)』が最初だと言われています。同社は元々TRPG(テーブルトークRPG)を展開していた会社でした。TRPGとは、ゲームマスターという物語の進行役とプレイヤーが会話しながら展開されるアナログRPGゲームです。テレビゲームの最古のRPG作品(のひとつ)とされる『ウィザードリィ』もこのアナログTRPGには大きな影響を受けており、その強すぎる西洋色のため日本人にはやや取っ付きづらい作品として知られていました。しかし、ドラクエの作者である堀井雄二(ほりいゆうじ)氏はこのウィザードリィに大ハマりしたと言います。そして本作に着想を得て日本人向けに再構築してドラクエを作り上げ、後の大ヒットにつながりました。言ってみれば、現地で流行っていたウィザードリィを堀井雄二氏が面白いと思わなかったらドラクエは生まれなかったというわけです。

実はこのウィザードリィと堀井雄二氏の関係は、ほぼそっくりそのままマジック:ザ・ギャザリングと石原恒和(いしはらつねかず)氏の関係にも当てはまるのです。石原氏はポケモンの「育ての親」とされる、初代『赤・緑』の頃から一貫してシリーズのプロデューサーを務められている人物です。マジック:ザ・ギャザリング(以下MTG)が日本で発売されたのは1996年の4月でしたが、石原氏がMTGにハマっていたのは1993年に現地で発売された直後の時期だと推察されます。1万枚ものカードを収集するほどのハマりっぷりだったそうですが、当時ゲーム本編の開発が進められていたポケモンとTCGの親和性の高さにピンときた石原氏は、ポケモンカードゲームの開発にも着手しました。そうして紆余曲折を経て、MTGの日本発売からわずか半年後の1996年10月に、国産初のTCGとしてポケモンカードはリリースされるのでした。

その後田尻氏は徐々に自分でゲームを作ることを志すようになり、1989年に通信ケーブル機能を備えたゲームボーイが発売されると、この機能を活かしたタイトルとしてポケモンの原案を企画し、株式会社エイプというゲーム開発会社に持ち込んだのでした。エイプは『MOTHER』シリーズの開発で知られる会社で、社長はMOTHERを作った糸井重里(いといしげさと)氏。そして持ち込み当時の副社長は、テレビプロデューサーからエイプ副社長に転身していた石原氏でした。通信ケーブルの機能を活かしてプレイヤー間でモンスターを「交換する」という田尻氏が考案したゲームコンセプトは、エイプで好意的に受け止められ、(細かい企画の粗はあったそうですが)すぐに任天堂に売り込むことになったと言います。任天堂からもGOサインが出て、田尻氏はポケモンの開発に本格的に着手します。

ここから赤・緑が発売されるまで、なんと6年もの年月を要することになります。その紆余曲折はまた別の機会に譲るとして、その間石原氏は田尻氏のチームを育成するために別のソフト開発の仕事を取ってきたりしつつ、辛抱強くポケモンの完成を待ちました。そしていよいよ完成のメドが立ち始めたら、今度は各種メディアミックスの準備に奔走し始めました。しかし後に大成功を収めることになるこのポケモンプロジェクトも、まだ開発中の頃は半信半疑な関係者も多く、色々と苦労されたそうです。マンガ連載先としては、唯一前向きな返事をしてくれた小学館・コロコロと提携。アニメ化に関しては、アニメ終了時に一気に作品の勢いがしぼんでしまう悪しき前例を目にしてきたため、最低1年半以上の放映を確約させた強気の契約を勝ち取りました。

ここから赤・緑が発売されるまで、なんと6年もの年月を要することになります。その紆余曲折はまた別の機会に譲るとして、その間石原氏は田尻氏のチームを育成するために別のソフト開発の仕事を取ってきたりしつつ、辛抱強くポケモンの完成を待ちました。そしていよいよ完成のメドが立ち始めたら、今度は各種メディアミックスの準備に奔走し始めました。しかし後に大成功を収めることになるこのポケモンプロジェクトも、まだ開発中の頃は半信半疑な関係者も多く、色々と苦労されたそうです。マンガ連載先としては、唯一前向きな返事をしてくれた小学館・コロコロと提携。アニメ化に関しては、アニメ終了時に一気に作品の勢いがしぼんでしまう悪しき前例を目にしてきたため、最低1年半以上の放映を確約させた強気の契約を勝ち取りました。

さてドラクエⅧの開発を終えて一つ大きな目標を達成した気持ちになった日野氏は、次の挑戦としてパブリッシング事業への進出を考えました。それまでのレベルファイブはゲームのデベロッパー専任の会社。パブリッシャーからの出資を受けて、そのお金で面白いゲームを開発するのが仕事でした。言ってみれば、ゲームのクオリティに全集中する役割です。ではパブリッシャーの仕事は何かと言うと、ゲームの企画、デベロッパーの選定・出資、開発進捗の管理、新作ゲームの宣伝・販売・流通、と非常に多岐にわたります。言ってみれば、ゲーム開発以外は全てパブリッシャーの仕事なわけです。もし渾身の新作が売れなかった場合、パブリッシャーはデベロッパー以上に痛手を負うわけで、言ってみればハイリスク・ハイリターンな事業だと言えます。日本のゲーム会社でパブリッシング事業を展開しているのは、これまでレベルファイブが世話になってきたソニーやスクエニなど限られた会社のみです。そこに割って入ろうという野心を日野氏は抱いたわけです。

そして、石原氏自身が「これはイケるはず」と考えていたTCG化。この案件は特に苦労されたといいます。このとき石原氏はエイプを退社して株式会社クリーチャーズという会社を立ち上げて独立しており、ポケモンのプロデュース業務一本で仕事されていたそうです。そんな石原氏にとってポケモンのTCG化は肝いりのプロジェクト。海の向こうでのMTGの成功を見て、日本のTCG市場はポケモンが切り開く!と意気込んでいたはずです。しかし、新しい市場を切り開くというのは、新しい販路を構築するということでもあります。つまり、カードを小売店に卸してくれる問屋の理解を得なければビジネスが成り立たないのですが、この問屋勢はTCGへの理解が薄く、協力してくれる会社をなかなか見つけられなかったと言います。ちなみに任天堂が元々花札の会社だったというのは有名なエピソードですが、テレビゲーム業界に参入して以降もトランプなどのカードゲームを任天堂は変わらず取り扱っています。そうなれば懇意の問屋への口利きも期待できそうなものですが、なんとパートナーである任天堂すらもこのTCG化には非協力的だったそうです。四面楚歌で窮地に陥った石原氏でしたが、唯一大阪のスターコーポレーションと言う問屋がパートナーとして手を挙げてくれ、販売元としては任天堂ではなく当時社員10数名のメディアファクトリーが請け負ってくれることになりました。

そうして、ほとんど誰からも期待されない企画のポケモンカードゲームでしたが、なんとか1995年10月に発売まで漕ぎつけられました。ゲーム版発売の8カ月後、日本でのMTG発売の半年後のことでした。そこからはポケモン人気に乗っかりつつも、TCG自体が備える魅力も日本全国に受け入れられ、皆さんご存じの大人気コンテンツへと成長していくことになります。任天堂と多くの問屋はTCGを複雑すぎると言ってその可能性を認めませんでしたが、TC文化が浸透した日本市場においてそこにゲーム要素が加わったTCGが成功するのは必然だったのではないでしょうか。もしポケカが企画倒れになっていたとしても、どこかのタイミングで後続の別TCGが成功を収めたことでしょう。

旧裏面時代

さて、TCGに限らずゲームと言うのはプレイしないと面白さが分からないものです。つまり、面白そうと思わなければ、消費者は買おうとはなりません。しかしTCGはゲームであると同時に、収集自体が目的であるTCでもあります。ポケカが発売された当時の日本はTCGと言うジャンル自体未成熟だったこともあって、最初はTCとしての魅力を感じてポケカに手を出した人が多かったと思われます。

ではTCの魅力とは何か。熱心なTCファンだったら色んな魅力を挙げてくれるでしょうが、やはり最大の魅力はイラストではないでしょうか。特にポケカのイラストは今なお大人気です。確かに、美麗なイラスト・カードデザインが目を引き、TCをやっていない人でも思わず欲しいと思ってしまう魅力があります。一方初期のポケカはイラストの美麗さは現代には及ばないものの、ポケモンの生態を描くというコンセプトに関しては当時から徹底されており、今見ても味わい深いです。例えばこのヒトカゲのイラストですが、このヒトカゲはまだ幼くて「この尻尾についている炎はなんだろう」と不思議がって見ているシーンだとイラストレーター自身が解説しています。ポケモンに意思がある・実際に生きている、というのを表現するのが大事だそうです。そうして丁寧に作り上げられたイラストが人気の秘訣だと言えるでしょう。

また、ポケモンアニメの放映に先駆けて発売されたというのも、スタートダッシュに大きく影響したと思われます。プレイヤーは推しのポケモンの姿をゲーム上の粗いグラフィック(と数少ない公式イラスト)でしか確認することができず、実際どんなポケモンなのだろうかと日々妄想して過ごしていました。そんな飢餓状態で、ゲームに続く肝いりの関連商品として市場に投下されたのがポケカでした。その書き下ろしのカラーイラストはアニメ放送開始までは特に価値が高く、イラストに惹かれて購入した人は多かったでしょう。また、ポケモンというコンテンツの商品はとりあえず買ってみようという層もいたはずです。そうしてTCGの入り口に立ってくれた消費者に対し、今度はTCGというゲームの面白さで訴求し、「ポケモン」ではなく「ポケカ」というコンテンツ自体にハマってもらう、というのがこのビジネスのミソでした。「ポケカ」にハマると、今度は強いカードが複数枚欲しくなり、またポケカを買ってくれます(ちなみに、この「複数枚欲しくなる」という構図はTCには無いTCG固有の性質です)。そうしてポケカに熱中する人が増えると、なんだか話題になっているなと新しい客も寄ってきます。この、徐々にTCG沼に引きずり込むような抜け目ない戦略が市場にブッ刺さり、ポケカは人気を高めていきました。

ポケカはルール設計も秀逸でした。場にポケモンを出して競い合う、ポケモンは6匹まで、というのはゲームと同じルールですから、自分がリアル世界でトレーナーをしている感を味わうことができます(ごっこ遊びの延長ですね)。とはいえ、ポケカはTCGの中ではシンプルなルールだとされていますが、それでもTCG自体やったことのない人にとっては、どうしても複雑なルールに見えてしまいます。当時の日本はTCG自体が新しかったので、特に小さい子供同士は実際どうやって遊ぶの?となってしまった子が多かったそうです。

そんな折に発売されたのが『ポケモンカードGB』というゲームボーイタイトルでした。本作はチュートリアルを進めることで自然とルールを覚えられる作りになっており、ポケモンカードのルール普及に大きな役割を果たしました。またソフト一本あればゲーム内で色んなデッキを組めたので、デッキ構築の奥深さに目覚めたプレイヤーも多かったでしょう。当時はまだ、ゲーム内カードを集めるのにリアルマネーを投じなければならない現代の課金要素が一切なく、ゲームをやり込めばやり込むだけレアカードをゲットできました。肝心のゲームとしてのクオリティも素晴らしく、デジタルになることで再現しにくかった一部の要素を除きほぼ完全に現実のポケモンカードルールをゲームに落とし込んでいました。それまで公式ルールにピンと来ていなかった多くのプレイヤーが、本作を遊ぶことでポケモンカードゲームの奥深さを知り、いっそうリアルの紙ポケカにハマっていくことになりました。ちなみに本作はストーリーも面白く、Dr.オーヤマ(ポケカの「生みの親」(ポケカゲームデザイナー兼イラストレーター)である大山功一(おおやまこういち)氏がモデル)のサポートを得ながら主人公が8つのクラブを巡ってクラブマスターを倒し、8つのマスターメダルを集め、ポケモンドームにいる4人のグランドマスターに挑む、という内容で、完全に本家ポケモンオマージュでした。プレイヤーにとって理解しやすい展開であると同時に、ベタに燃える展開でもありました。ちなみにこれは小話なのですが、実は本作はハドソンによる持ち込み企画だったそうで、版元の許可を得る前から開発に着手していた先走りっぷりだったといいます。ポケモンとハドソンと聞くと関わりなんてないイメージですが、実はポケモンカードGBの開発でつながっていたんですね。

しかしこのポケモンカードGB、良作なのに、売上的にはある競合タイトルにコテンパンに負けてしまいました。そのタイトルは、ポケカGBの2日前にコナミより発売されたゲームボーイタイトル、『遊戯王デュエルモンスターズ』でした。ちなみに気になる人向けに少しだけポケカと遊戯王の順番を語ると、1996年10月にポケカが発売されたわずか1カ月後の11月に、遊戯王本編におけるマジック&ウィザーズ初出の回(海馬がホワイトアイズを自慢しにくる回)が掲載されました。その後作者はカードバトル展開がウケていると知り、1997年12月にはいわゆるペガサス編を開始。つまり、ポケカGBが発売された1998年はペガサス編が絶頂の頃だったんですね。そんな折に発売された遊戯王GBだったので、ポケカGBは苦戦を強いられたのでした。しかしゲームのクオリティに関してはポケカGBの圧勝だったというのが、なんとも歯がゆいところ。ちなみに現在もコナミより展開が続いている遊戯王OCG(オフィシャルカードゲーム)は1999年発売開始です。リアルTCGに先駆けて発売されたGB版だったそうで、ルールも後の正式版とは異なっていたそうです(1998年当時のリアルカード情勢はというと遊戯王カードダス(バンダイ版)が人気で、後にバンダイ版カードダスvsコナミ版OCGのバトルが勃発するのですが、さすがに脱線しすぎなので自重します)。

さて、話を戻してポケカGBは3年後に続編が登場するのですが、当時の開発者の証言曰く完成してから2年ほど寝かされたそうです。その経緯は調べても分からず、もしかすると遊戯王が影響しているのではないかという邪推もしてしまいますが、とにかく不明です。そしてその2年というのが、これまたポケカGB2の苦戦の原因になってしまいました。ゲーム自体は1の正統進化で良作と言われているのですが、ゲーム発売時点のリアルポケカは金銀編に入っておりポケモンの種類が251種類だったのに対して、ゲームの方はいまだ151種類(+ルギア・マリル・ピチュー)のみで物足りない印象を与えてしまいました。また、発売の1週間前に新ハード・ゲームボーイアドバンスが発売されたのに、ゲームボーイカラーでのリリースになったというのも、なんともチグハグな印象でした。ゲームの出来に反して売上的には苦戦を強いられ、非常に残念なことに本作以降ポケカのゲーム展開がパッタリと途絶えてしまいます。

さて、ポケカGBは本家リアルポケカのプロモーションとしての側面を備えていたわけですが、ポケカGBよりももっと大きな貢献を果たしたのが『イマクニ?』さんでしょう。イマクニ?さんの正体はクリーチャーズの社員・今国智章(いまくにともあき)氏なのですが、全身黒タイツ様相のキャラクターで『おはスタ』やコロコロなどで新作カードの宣伝をされていました。イマクニ?さん自身の人気が高まったきっかけは『ポケモン言えるかな?』だったと記憶しています。アニメではポケカCMがバンバン打たれていましたが、その際に流れていたのが『ポケモン言えるかな?』でした。ラップ調で独特なテンポだったこの曲は妙に耳に残り、子供たちの間で大いに流行りました。ちなみにイマクニ?さんはポケカGBにも出演されています。

新裏面時代

ここまで初期ポケカを取り巻く主要なトピックを紹介してきましたが、ここでポケカにとって大きな転換点になった裏面デザイン変更について触れたいと思います。TCGにとって裏面のデザインと言うのはとても重要でして、もし裏面のデザインをコロコロ変わってしまうと、「あの裏面デザインということはあのカードが手札に入っているのか?」という本来排除したい推理が意図せず介入することになります。にもかかわらず、ポケカは2001年に裏面デザインの変更を断行します。それまでポケットモンスターと印字されていた裏面は、世界基準のポケモン表記に変わりました。にもかかわらず、国外のポケカの裏面デザインにそっくりそのまま合わせたというわけではなく(ポケモン表記だけ合わせた)、中途半端な印象を残しました。ちなみにこの2001年以来裏面デザインの変更はされておらず、2024年現在も日本と国外で裏面デザインは異なるままです。

この裏面デザイン変更により2つの大きな影響が生じました。旧裏面カードの価値高騰(この件は後ほど語ることにします)と、新裏面変更以降のポケカ人気低迷です。先ほども述べた通り、裏面デザインが代わるとそれまでのカードとの互換性が切れてしまうことを意味します。公式大会では裏面をマスクするスリーブを用いることで新旧裏面混合での大会参加を認めるなど配慮もされたそうですが、TCGファンにとっては受け入れがたい出来事だったようで、残念ながらポケカの人気は萎んでいきました。

しかし、時間をかけてポケカ人気は復活していきます。マクドナルドを始めとする色んな企業とのコラボで限定ポケカを配布する『プロモーションカード』という取組みや、2010年から開始したBWシリーズから新登場となった美麗なイラストが目を引く『EXカード』など、色々な施策で人気を徐々に取り戻していきます。特に2018年にリリースされた『GXスタートデッキ』は人気再燃に大きく貢献した商品でした。本商品は500円で売り出された全9種の構築済みデッキシリーズでして、手ごろな価格でポケカを楽しめるとあって、新規勢・復帰勢が増えました(遊戯王のルール変更によって行き先を失ったTCG勢も取り込んだとか)。ちなみに著名YouTuberにポケカの案件をバラまいていた(と思われる)のもちょうどこの頃。ポケカ発売から20年余りが経ち、当時ポケカを触っていた子供たちの一人だったインフルエンサーに案件を投げることで、投稿主と一緒にノスタルジーを感じる同世代視聴者とポケカを知らない若年視聴者、両方同時のアプローチに成功しました。復帰勢にとっては、少ないお小遣いでやりくりしていた子供の頃に夢見ていた大人買いが今ならできる、そういうロマンも作用したかもしれません。ちなみに開発元であるクリーチャーズは親子で遊んでほしいとも語っており、カムバックしやすいようにルールもできるだけ昔のままにしておくポリシーだそうです。このように考えると、時代が一周した、というのが人気再燃の最大の理由ではないでしょうか。裏を返せば、それだけ長生きなポケモンというIPの勝利とも取れそうです。

そんなポケカですが、2020年に入ってコロナ禍になると、ポケカバブルなる現象が発生します。まずポケカ対戦勢がリアルで対戦できなくなり、代わりにコレクション勢に移行したプレイヤーが多く出たといいます。そしてアウトドア趣味だった人たちがインドア趣味を求めて、ポケカへ一定数流れていきました。また市場全体で見たときにお金の使い先が減ってしまったことで投資マインドが高まりましたが、株はコロナ禍で見通しが立ちづらく、そんなときにポケカ人気を聞きつけた人たちが投資目的でカード売買をするようになりました。そうした状況に輪をかけたのが、カードの美品ぶりを評価するレーティング屋の存在でした。PSA社による鑑定で最高の10点が付いたカードは価格が跳ね上がる、そうした傾向もバブルの要因になりました。このようにポケカバブルの発生メカニズムは非常に複雑で、おそらく学術的な研究対象としても面白いと思うので、これ以上は別の方に譲ることといたします。この動画では、高値を付けた象徴的な3枚のカードを取り上げたいと思います。

まずは『かいりきリザードン』です。このカードはポケカが発売した最初のパックに封入されていたリザードンなのですが、本来は「かえんポケモン」とプリントされるべきところ、誤植で「かいりきポケモン」と印字されています。このミスプリントは後に修正されたのですが、そうすると流通枚数が少ないこの「かいりきリザードン」の希少性が増します。ただでさえ人気なカードでしたが、ポケカバブルを受けてさらに売値がハジけたという構図。ヒカキンさんがPSA10の「かいりきリザードン」を5000万円で購入したことでも話題になったのも、ちょうどバブル中のことでした。

続いて『ポケモンイラストレーター』です。このカードは1997~1998年にかけてコロコロコミック誌上で実施された「イラストアーティストコンテスト」で最優秀賞・優秀賞に輝いた、わずか39名の少年・少女にしか配られなかった限定カードです。最優秀賞の作品はそのままポケモンカードになる!という企画だったのですが、20年以上経った今その副賞だった限定カードの方が話題というのは少し皮肉です。PSA10点の「ポケモンイラストレーター」は7億円の値での取引が成立し、ネットニュースにもなりました。購入したのは海外のYouTuber・格闘家のLogan Paul氏。プロレスの試合入場の際に、ケースに入ったこのカードをネックレスにして身に着けたことで話題を呼びました。

最後に紹介するカードは、通称『がんばリーリエ』というカードです(※他の絵柄のリーリエと区別するために「がんばリーリエ」と呼ばれている|元ネタはゲーム内のセリフ)。先ほど紹介した「かいりきリザードン」と「ポケモンイラストレーター」はいずれも旧裏面の古いポケカでしたが、こちらのカードは2017年に発売された『GXバトルブースト』というパックに低確率で封入されていたカードで、言ってみれば普通の当たりカードです。当初はカード性能が高く、イラストも良い(人気イラストレーターであるさいとうなおき氏の作品)とあって、当時としては高めの5000円程度で取引されていました。しかし先述のポケカバブルによって、なぜか女の子トレーナーのSRカードが一様に高騰していくことになります。高値が高値を呼ぶまさに「女の子SRバブル」の中、特にこの「がんばリーリエ」はポケカ人気が再燃する前のカードということで流通枚数が少なく、そこにとんでもない需要が覆いかぶさったことで価値が高騰していきました。一時は1000万円を超える値(当初の2000倍!)が付いたこともあり、まさにポケカバブルを象徴する1枚となりました。

さて色々語って長くなってしまいましたが、最後にポケカのDCG事情について述べたいと思います。DCGとはデジタル・カード・ゲームを指し、イメージしやすいところで言うと『遊戯王 デュエルリンクス』や『遊戯王 マスターデュエル』は遊戯王のDCGです。ポケカのDCGはと言うと、先述のポケカGB・ポケカGB2はいずれもDCGに相当します。しかし当時はインターネットとの接続が無いオフラインDCGでした(ローカル通信で友達と対戦・カード交換はできましたが)。それ以降時代が進んで、TCGをアプリ化したオンラインDCGが一般的になっていくのですが、ポケカのDCG展開は全く音沙汰が無かった…わけではありませんでした。実は日本では展開されていないのですが、『Pokémon TCG Online』というDCGが北米向けに展開されていました(現在は後継の『Pokémon TCG Live』が稼働中)。実は北米は日本以外で初めてポケカが展開された地域でして、元々MTGでTCG市場が成熟していたのもあってかポケカ人気が完全に根付いています(初期の頃から日米対抗での公式大会なども開催)。そんなポケカファンの多いアメリカの『Dire Wolf Digital』というカードゲーム会社が開発し、株ポケ子会社The Pokemon Company Internationalによる公式DCGとしてリリースされたのが、このポケカオンラインなのでした(ちなみに後継『Live』は内製開発に移行)。オンラインでポケカが楽しめる、収集要素があって交換も対戦も可能、ゲームのクオリティも上々、とあって日本のポケカファンの間では一定の知名度があった作品でして、実は少し手順を踏めば日本でもプレイ可能でした(日本の配信者もプレイしていました)。日本に上陸しなかった理由は公式発表が無いため定かではありませんが、コストをかけてまで日本語対応するのが難しかったのだと思われます。一度ローカライズしてそれで終わりではなく、ライブサービス型のゲームでしたので継続的なサポートが必要でした。またリアルポケカの市場を食ってしまう恐れもあったのも原因の一つだったでしょう。一部のコアファンの声は届きつつも、とうとう株ポケの重い腰を動かすまでには至らなかった、というのが真相ではないかと思っています(株ポケの最近までのDCGに対する消極的な姿勢を見るにポケカオンラインも昔のハドソンみたいにDire Wolf Digitalの持ち込み企画だったのでは…裏付け情報は見つけられませんでしたが)。

そんな悲しいポケカDCG事情でしたが、ようやく、DeNA開発による『Pokémon Trading Card Game Pocket』という日本製DCGが2024年2月27日(赤・緑発売から28周年の日)に発表されました。リリースは同年10月30日で、この動画投稿時点もう目前にまで迫ってきました。ポケカ界にとって本当に待望のDCG展開でして、力も入っていそうなので、期待して待ちたいと思います。

参考文献

興味ある方は折りたたみを展開ください。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/110900572/?P=1

https://www.uniphoto.co.jp/special/baseball_card

https://full-count.jp/2022/08/29/post1273367/

https://magi.camp/blogs/1097238794

https://t-machine.jp/web-bungei/54120/

https://bunshun.jp/articles/-/46386

https://recore-pos.com/column_post/tcg-history/

https://www.famitsu.com/news/201903/14173198.html

https://ameblo.jp/kirieru-eruwanko/entry-12078114908.html

http://sunanohi.web.fc2.com/pokemon/link_person.html

https://animeanime.jp/article/2016/02/28/27207.html

https://www.oricon.co.jp/news/2185697/full

https://www.famitsu.com/news/202310/19320055.html

https://ruinsforgotten.gger.jp/archives/6209086.html

https://pivotmedia.co.jp/article/9782

http://nimonote.blog105.fc2.com/blog-entry-614.html

https://www.japandesign.ne.jp/interview/igp-arita

https://www.ptcgic-cr.com/2024/column/article-8

https://karubiimu.blog.jp/archives/25949433.html

https://togetter.com/li/2302244

https://note.com/sunagaga0508/n/n96515019a414

https://note.com/vss_japan/n/n658e7245a529

https://note.com/pokeboon/n/nea1df09b8de0

https://magi.camp/blogs/566411607

https://magi.camp/blogs/1277513680

https://www.famitsu.com/news/202302/25294060.html

https://pokeboon.com/jp/promo_event/pokemon-card-game-illustration-artist-contest

https://www.zoidsland.com/1rebyu-/koro98-1b.html

https://magi.camp/blogs/1015044660

https://ciel-toreca.com/osirase/pokemoncard/1096.html

https://magi.camp/blogs/1649824095

https://www.pokemon-card.com/20th/chronicle

下記記事の内容も興味深かったです。

https://premium.kai-you.net/article/733

https://gamebiz.jp/news/380720

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