【Switchの歴史】逆境を超えたNintendo最長寿ハード8年間の歩みを振り返る|2017(誕生)~2025(Switch2)

  • URLをコピーしました!

ゲーム史探訪notesというyoutubeチャンネル ( 私自身が運営 ) に、【Switchの歴史】逆境を超えたNintendo最長寿ハード8年間の歩みを振り返る|2017(誕生)~2025(Switch2)という動画をアップしました。

この記事は、その台本のベタ貼り記事です。文字情報でザザっと追いたい方用です。

こちらの記事もオススメです。

あわせて読みたい
歴代のThe Game Awardsを振り返る【PS5世代編】 歴代のThe Game Awardsを和ゲー中心にまとめました。GOTYだけでなく、GOTYノミネート作やGOTY以外の受賞作まで網羅するようにしたので、各年の主要タイトルをザッと把握できる記事になったと思います。
あわせて読みたい
龍が如くのロードマップを勝手に予想してみた 龍が如くは今どきのゲームタイトルでは唯一無二と言えるハイペースで新作を供給し続けているIPです。ナンバリング最新作・龍が如く8が最大のヒット作となった今、今後のIPロードマップが気になったので勝手に予想してみました。

「マンガのブログ」という別ブログもやっています。

マンガのブログ
マンガのブログ | 次に読みたいマンガが見つかるブログ オススメのマンガを紹介するブログです。1巻あたり平均部数のランキングや、漫画賞受賞作の一覧などをまとめています。次に読みたいマンガが見つけられるブログを目指して...
目次

逆転の始まり|Wii Uの敗北から生まれた新コンセプト

2025年4月。Nintendo Switch 2 の詳細が発表されました。初代よりも大きな画面、改良されたJoy-Con、そして洗練されたデザイン。世界中で親しまれたSwitchの流れを受け継ぎ、Switch2は再び世界を驚かせようとしています。しかし、その歩みは最初から順調だったわけではありません。Switch2の発表から遡ること10年。当時の任天堂はWii Uの失敗によって深刻な経営危機に陥っていました。そこから任天堂はどう立ち直り、再び輝きを取り戻したのか。この動画ではNintendo Switchの誕生から次世代機への橋渡しまで、主要タイトルの変遷と決算の推移を通してその軌跡を振り返っていきます。

2006年、任天堂はモーション操作を取り入れた画期的な新ハードWiiを発売しました。直感的な操作が幅広い層に受け入れられ、1億台を超える大ヒットを記録します。しかし性能面ではライバル機に劣っており、サードパーティからの支持は限定的でした。

この反省を踏まえ、任天堂は新たな挑戦としてWiiの後継機「Wii U」を投入します。2012年に登場したWii Uは6.2インチのタッチスクリーン付きゲームパッドを採用し、据置機と携帯機の融合というこれまでにない仕組みを打ち出しました。しかし、その挑戦はかえって混乱を招く結果となりました。カジュアル層には「Wiiの周辺機器が増えただけ」と誤解され、コアゲーマーからは性能の低さを理由に
手に取ってもらえませんでした。結果として販売台数は1300万台にとどまり、任天堂は営業赤字へと転落。さらにスマートフォンゲームの台頭も重なり、任天堂にとって据置型ゲーム機という存在
そのものの価値が問われる状況となっていきます。

それでも任天堂は「据置と携帯の融合」というアイデアそのものは捨てませんでした。むしろWii Uで得た教訓をもとにその形を根本から見直していきます。プロモーション戦略は正しかったのか。本体価格と開発コストの高騰を招いているゲームパッドは、果たして本当に魅力的か。これらを一つずつ精査したうえで、任天堂はシンプルで直感的な新しい形を模索しました。

そうして完成したのが、「テレビに接続すれば据置機、取り外せば携帯機」という明快な構造です。この発想からNintendo Switchが誕生しました。2016年10月に公開されたコンセプト映像では「どこでも遊べる据置機」というメッセージが強調され、Wii Uでは伝えきれなかった魅力が今度ははっきりと伝わりました。その新しさは市場に歓迎され、期待感が一気に高まっていきます。そして2017年3月3日、Nintendo Switchが発売。ここから任天堂の反撃が始まりました。

戦略的スタートダッシュ|狙いすましたタイトル展開が支えた3年間

Switchが発売された2017年。任天堂はこの1年に4本のキラータイトルを計画的に投入。新作が途切れず話題を保てるよう、リリース時期を巧みにずらしていました。

まずローンチタイトルとして同時発売されたのが『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』です。崖を登り、風に乗って空を飛ぶ――。プレイヤーの発想がそのまま遊びになる任天堂ならではの自由な世界観が高く評価され、シリーズ未経験者にも広く受け入れられました。その結果全世界で3200万本以上を売り上げ、Switchローンチを象徴する1本に。「この1本だけでハードを買う価値がある」とまで言われ、任天堂の開発力を世界に改めて印象づけました。

続いて4月に発売されたのが『マリオカート8 デラックス』。Wii U版『マリオカート8』に全DLCと新要素を加えた完全版であり、Switchの新規ユーザーにとっては事実上の新作として受け入れられました。Joy-Conを使った「おすそわけプレイ」との相性も良く、購入してすぐにみんなで遊べるタイトルとして定番化。ハード本体とセットで購入するユーザーも多く見られました。売上は6700万本を突破し、ハード独占タイトルとしてはゲーム史上最高の売上本数を記録。まさに「最強の完全版」として長年にわたってSwitchを支える一本となりました。

次に登場したのが7月の『スプラトゥーン2』。前作はWii Uで登場した新しいシリーズとして評価されましたが、ハードの普及率が低かったため、実際にプレイできた人は限られていました。Switchでの続編は、そうした潜在的な需要を一気に掘り起こす形になりました。日本国内では特に注目を集めSNSや動画配信などで連日話題に。カジュアルなビジュアルに対ししっかりと競技性を備えたゲーム性が評価され、大会シーンでも存在感を示しました。『スプラトゥーン2』は新世代の対戦ゲームとして、Switchを代表するタイトルのひとつとなっていきます。

そして10月『スーパーマリオ オデッセイ』が発売されました。『スーパーマリオ64』や『サンシャイン』の流れを汲む箱庭型3Dマリオ。本作ではマリオが「都市の国」や「砂漠の国」など、雰囲気の異なるステージを巡っていきます。敵やモノに乗り移る「キャプチャー」アクションも新鮮で、自由な発想が次々と遊びに変わる作品となりました。全世界で2900万本以上を売上げた本作は、年末商戦の主力タイトルとしてSwitchの販売をさらに加速させました。

このように2017年度は、4本のキラータイトルによってSwitchは最高の滑り出しを果たしました。

2018年度。Nintendo Switchはさらなる広がりを見せました。この年はサードパーティーの本格参入、Wii Uタイトルの再評価、そして対戦ゲームの躍進といった複数の軸で市場を広げていった重要な1年でした。

まず注目を集めたのが、スクウェア・エニックスの『オクトパストラベラー』。HD-2Dという独自のグラフィックスタイルと戦略性の高いバトルが評価され、発売からわずか2ヵ月で売上100万本を突破。Switchでもサード製RPGがしっかりとヒットすることを証明したタイトルでした。

一方ファーストパーティーでは、Wii U時代の名作をSwitchで活かす戦略が加速。5月には『ドンキーコング トロピカルフリーズ』が移植され、前世代機で埋もれていた傑作がようやく多くの人の手に届くタイトルとなりました。

さらに翌年1月には『New スーパーマリオブラザーズ U デラックス』も追加要素が加えられて登場。2Dマリオの王道的なゲーム性がSwitchのカジュアル層にフィットし、この作品をきっかけにシリーズへと入っていった新規ユーザーも多かったとされています。こうした再活用の動きは当時の開発資産を無駄にせず、Switchという新たな舞台で価値を取り戻すという任天堂の明確な戦略でもありました。「遊ばれなかった名作を、もう一度届ける」という姿勢は、市場にも好意的に受け止められています。

そして年末に待ち構えていたのが『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』。歴代シリーズの全キャラクターが参戦するという前代未聞のボリュームに加え、膨大なキャラ数を感じさせない絶妙なバランス調整が施され、シリーズ最高峰の完成度を誇る作品となりました。DLCによる新キャラクターの追加も盛り上がりを後押しし、『スマブラSP』は異例のロングセラーを達成。また本作は『スプラトゥーン2』と並んで対戦イベントの中心としても機能し、1人でも、みんなでも、競技としても楽しめるというSwitchらしい多層的な遊び方を体現したタイトルとなりました。

このように2018年度はサードパーティの活躍、Wii Uタイトルの再活用、そして『スマブラSP』という超大型タイトルの成功が重なり合い、Switchの市場にさらなる広がりをもたらしました。

Nintendo Switch Liteが新登場した2019年度。この年Switchは更に多彩なジャンルのゲームを取り揃え、その表現の幅を一段と広げていきました。この年はファーストパーティー作品の充実が特に目立ち、任天堂ならではのジャンルで新たな挑戦が次々に展開された年でもありました。

まず取り上げるのが『ファイアーエムブレム 風花雪月』です。本作のストーリーは士官学校での日常から始まり、やがて国家間の戦争へと発展していきます。同じキャラクターたちがルートによって敵にも味方にもなり、プレイヤーの選択によって物語が大きく分岐。視点や正義が変わる構成が没入感を高め、シリーズ未経験者からも高い支持を集めました。

次に注目したいのが『リングフィットアドベンチャー』。Joy-Conと専用のリング型コントローラーを使い運動しながら冒険するこの作品は、かつての『Wii Fit』から大きく進化を遂げた一本です。ステージの進行やバトルが全て運動に直結し、RPGの成長要素やストーリーが運動の継続を自然に促していました。楽しく体を動かしたいというニーズに応えながらゲームとしての完成度も高く、フィットネスゲームの新定番として多くの支持を集めました。そしてこの作品、ある出来事をきっかけに翌年ふたたび大きな注目を集めることになるのですが、その話はまた後ほど。

さて次に取り上げるのは『スーパーマリオメーカー2』。Wii Uで登場した前作はその革新性が話題となりましたが、本体の普及が伸び悩み実際に遊んだユーザーは限られていました。Switch版ではその魅力がようやく広く届き、発売直後から大きな盛り上がりを見せます。ステージ作成の自由度や共有機能がさらに洗練され、「レートバトル」による対戦要素も加わったことで、クリエイティブと競技性を兼ね備えたタイトルへと進化。「遊ぶ・作る・見せる・競う」という、Switchらしい多層的な楽しさが詰め込まれた一本となりました。

そして2019年度最大の話題作が『ポケットモンスター ソード・シールド』でした。これまで携帯機向けだったポケモン本編が初めて据置機に登場。向上したグラフィックと広大なフィールドが注目を集め、据置機ならではの迫力がシリーズに新たな魅力を加えました。一方で「いつでもどこでも遊べる」というシリーズ従来の強みも健在。まさにポケモンというゲームが「進化」を遂げた瞬間でもありました。

このように2019年度は、シミュレーションやRPG、フィットネス、アクション、クリエイティブなど、任天堂の得意分野をさらに深め、多様な遊びを展開した1年でした。

2017年度から2019年度にかけて、任天堂の業績はSwitchの牽引によって力強く回復していきました。売上は毎年1兆円を超え、営業利益も年々増加。Wii U時代の赤字が嘘のように、かつてない水準の利益を3年連続で叩き出しました。

その成長を支えたのは、数々のヒットタイトル。今なおSwitchを代表するタイトルが数多く含まれています。たとえば『マリオカート8 デラックス』。Wii U版の内容を全て盛り込み、Switchで再び脚光を浴びた本作が驚異の6700万本超えで堂々の1位に。『スマブラSP』『ブレス オブ ザ ワイルド』『マリオオデッセイ』『ポケモン ソード・シールド』もそれぞれシリーズの代表作と呼べる実績を残し、世界中のユーザーに支持されました。

一方でこの章では詳しく触れなかったものの、『スーパーマリオパーティ』や『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・イーブイ』、『ルイージマンション3』といった作品もSwitchソフト売上ベスト20にランクイン。どれもそれぞれのジャンルで存在感を放ち、Switchに多様な魅力を加えていました。

そして2019年度の終わりには、Switchの運命をさらに変える『あるタイトル』が登場します。その話は、次の章で。

広がるラインナップ|多様なタイトル展開が支持を広げた3年間

2020年。この年は世界中の人々にとって忘れられない1年となりました。突如訪れた世界的な混乱によって、日常は一変。外出の自粛、リモートワーク、イベントの中止。人々は「家の中でどう過ごすか」という問いに直面します。そんな中で、多くの人々の暮らしにそっと入り込んできたのがNintendo Switchでした。一次品薄になるほどの人気を集めたこのハードは、ただのゲーム機を超えて「人と人をつなぐ手段」として多くの家庭に受け入れられていきました。

その象徴となったのが『あつまれ どうぶつの森』です。本作はニンテンドーDSや3DSで人気を博した『どうぶつの森』シリーズの最新作。それが9年ぶりに据置機へと戻ってきたのが、2020年3月。ちょうど世界が大きな変化に直面し始めた時期でした。ゲームの舞台は無人島。家を建て、島を整え、どうぶつたちと交流しながら思い思いのスローライフを楽しめるこの島は、現実が混乱と不安に包まれる中、多くの人にとってもう一つの世界となりました。離れた家族や友人との交流や、自分だけのマイデザインをSNSで共有するなど、つながり方も様々でした。「卒業式」や「結婚式」の場としても使われるなど、『あつ森』は単なるゲームを超えた存在として社会に深く浸透していきました。

また予期せぬ需要の波に乗ったもうひとつのタイトルが『リングフィットアドベンチャー』です。2019年に登場し徐々に支持を広げていたタイトルでしたが、外出や運動の機会が激減する中で「家でも楽しく体を動かしたい」というニーズが高まり、入荷しても即完売という異例の品薄状態が長く続きました。Joy-Conと専用のリングコンを使い運動しながら冒険する本作は、ゲームとエクササイズを融合したタイトルとして改めて注目を集めました。

そして、この年の年末にはもうひとつ大きなヒットが生まれています。『桃太郎電鉄 ~昭和 平成 令和も定番!~』です。長らく新作が出ていなかった桃鉄シリーズが、Switch向けの完全新作として帰ってきました。本作は経営要素と予測不能なハプニングを特徴とする「すごろくゲーム」。友人や家族とワイワイ楽しむあの感覚が、オンラインでも味わえるようになりました。販売本数は400万本を超え、シリーズ最高を記録。しかもその大半は日本市場での販売であり、サードパーティー製としてはSwitch最大級。まさに快挙と言えるヒットになりました。

このように2020年度のSwitchは、人々の暮らしの中で遊び以上の役割を果たすことになりました。

2021年度は人々の暮らしが少しずつ落ち着きを取り戻し、ゲームも「特別な存在」から「日常の一部」へと位置づけが変わっていきました。上位機種である『Nintendo Switch有機ELモデル』が発売されたこの年、本体の販売は引き続き好調。ソフトの方は任天堂タイトルがやや控えめだった分、他社の注目作が大きく存在感を示しました。

その筆頭が『モンスターハンターライズ』です。2020年度の終わりに駆け込むように登場した本作は、5年目を迎えるSwitchを代表するタイトルのひとつとなりました。和の世界観や翔蟲を使った縦横無尽なアクション。据置機向けだった『モンスターハンターワールド』とは異なり、携帯機らしいテンポ感と遊びやすさが重視されました。本作は後に他機種にも展開されましたが、当初はSwitch独占タイトル。Switchのサードパーティータイトルとして、大きな爪痕を残しました。

そしてもうひとつ注目を集めたのが、ポケモン本編の2作連続リリースという異例の展開です。まず登場したのは『ポケットモンスター BDSP』。『ソード・シールド』から逆行するようなグラフィック表現は賛否を生んだものの、DS時代の雰囲気に忠実なつくりは懐かしさをしっかり感じさせ、累計1500万本を超えるヒットを記録しました。

その2か月後には『ポケモンレジェンズ アルセウス』が登場します。本編を手がけるゲームフリークによる完全新作で、シリーズの未来を見据えた実験的な一本でした。舞台は古代のシンオウ地方――
すなわちヒスイ地方。広大なフィールドを探索し、距離やタイミングを活かしてポケモンを捕まえるなど、これまでにない遊びが詰め込まれていました。従来の枠を大きく飛び越えたこの作品は、Switch時代のポケモンに新しい風を吹き込んだチャレンジ作となりました。

このように2021年度は、モンハンとポケモンという2大シリーズがSwitchの存在感をさらに押し上げた一年でした。

2022年度はジャンルも方向性も異なる大型タイトルが揃い、それぞれの個性でユーザー層を広げていった一年でした。

まず注目したいのが『ゼノブレイド3』の存在です。本作は任天堂傘下のRPG開発スタジオ『モノリスソフト』によるシリーズ最新作であり、Switch独占タイトルとしてリリースされました。前作『ゼノブレイド2』は賛否の分かれたキャラクターデザインながら、壮大な物語と奥深い戦闘が評価され
シリーズの人気を大きく押し上げました。その流れを受け継いだ『3』では、シリアスな世界観と演出がより洗練され、RPG好きがしっかり遊べる一本としての完成度をさらに高めています。戦うことしか知らなかった少年少女たちが自らの運命に抗い、希望を見出していく物語は、Switch世代のコアユーザーに深く刺さる内容となりました。

次に紹介するのは対戦アクションの人気シリーズ『スプラトゥーン3』。前作『スプラトゥーン2』のヒットから5年。本作ではグラフィックやアクションの質が向上し、新たな武器やルールも追加されましたが、基本的な操作感やゲーム構造は大きく変わっておらず、大きな変化よりもシリーズの定番を丁寧に洗練させたような内容となっています。注目すべきは、運営の洗練。定期的なフェスやシーズンごとのコンテンツ更新が定着し、任天堂の姿勢がにじむ作品となりました。

そしてこの年最大の話題作が『ポケットモンスター SV』です。前作『ソード・シールド』で試験的に導入されたオープンワールド要素を今作では全面的に採用。プレイヤーは広大なパルデア地方を
自由に探索しながら、①:チャンピオンを目指してジムに挑戦する王道ルート、②:不良学生グループ「スター団」との対決、③:ペパーという少年と共に謎の秘宝を追いかけるサイドストーリー、という3つの物語を好きな順序で進められる構成となりました。レベルバランスの面では一部に課題も見られましたが、シリーズ屈指と評されるストーリー展開とこれまでにない自由度の高さが高評価を博しました。

このように2022年度は、ゼノブレイド・スプラトゥーン・ポケモンという異なる個性の3作がそれぞれの方向性でSwitchの多様性を体現した一年でした。

2020年度から2022年度にかけて、任天堂の業績はかつてない水準へと拡大していきました。売上は3年連続で1兆6000億円を超え、営業利益も5000億円台をキープ。社会の変化を追い風に、多様なタイトルで幅広いユーザー層を取り込み、Switchは最盛期を迎えます。

成長を下支えしていたのは、途切れず続いたヒット作の数々でした。この3年間に登場した作品の中にも、今なおSwitchを代表するタイトルが多く含まれています。たとえば『あつまれ どうぶつの森』。生活スタイルが変わりつつあった時期に登場したこの一本は、社会現象と呼ばれるほどの人気を集め、4700万本超えという驚異的なセールスを記録しました。『ポケットモンスター SV』『BDSP』『Legends』といったポケモン本編の連続展開も、それぞれにヒットを重ね、シリーズの幅を広げていきました。

一方でここでは個別に取り上げていないものの、『Nintendo Switch Sports』『マリオ 3Dワールド+フューリーワールド』『マリオパーティ スーパースターズ』といった作品もベスト20にランクイン。いずれも安定した売上を記録し、Switchの定番ラインナップとして支持を集めています。Switchはこの3年間で、あらゆるジャンルとユーザー層をつなぐハードへと進化していきました。幅広い層からの支持が定着したことで、Switchというプラットフォームはいよいよ完成形に近づきます。

次世代へのシフト|ロングセラーの終盤を支えた2年間

ハード末期に差しかかっても、Nintendo Switchの勢いは衰えませんでした。2023年度にはジャンルも方向性の異なる二本の大型タイトルが登場し、任天堂ファーストの層の厚さが改めて際立つ一年となりました。

まずは『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』。前作『ブレス オブ ザ ワイルド』の世界観を引き継ぎつつ「空」と「地底」という新たな探索空間が加わり、さらに自由な発想で道具を作ったり仕掛けを組み立てたりと、プレイヤーの創造力を刺激する遊びが数多く盛り込まれました。Switchというプラットフォームの限界を感じさせない作り込みで、シリーズの集大成と呼ぶにふさわしい一本です。

そしてもうひとつの話題作が『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』。2Dマリオとしては約11年ぶりの完全新作で、操作キャラごとの挙動の違いや「ワンダーフラワー」による大胆なステージ変化がシリーズに新鮮な驚きをもたらしました。シンプルながら奥深く幅広いユーザーに届く仕上がりで、マリオブランドの力強さを改めて印象づけました。

この二本は開発に長い時間と労力をかけ、丁寧に仕上げられた「本気の一手」。多くのユーザーが次世代機を意識し始める時期にもかかわらず、任天堂はSwitch向けに全力の新作を投入し、最後までユーザーに応えるラインナップを築いていきました。

そんな中で『ピクミン4』も着実に存在感を発揮します。「オッチン」という新たな仲間の登場によって操作性や探索の自由度が向上し、シリーズ未経験者でも入りやすい一本に。ピクミンというシリーズの魅力を改めて伝える作品となりました。

このように2023年度はハード末期にもかかわらず、任天堂が前向きな姿勢を貫いた年でした。

Nintendo Switchがハード末期とは思えないほどの盛り上がりを見せた2023年度。しかしその翌年2024年度は、一転して落ち着いた展開となります。目立った完全新作は少なく、ラインナップの中心はリメイクやリマスターへ。『ペーパーマリオRPG』など過去作の再構築が相次ぎ、新鮮味よりも懐かしさを前面に出したリリースが目立ちました。

こうした展開の背景には次世代機への移行準備があります。年度の始まり時点でもSwitchの後継機はまだ正式発表されておらず、任天堂は異例の長寿ハードとなったSwitchに対して慎重にタイミングを見極めていたと考えられます。準備体制や出荷計画といった調整の必要もあったと見られ、この「延長戦」ではいかにブランドの勢いを維持するかが問われました。

とはいえリメイク中心の構成が単なるつなぎだったとは言いきれません。シリーズファンの支持が根強いタイトルを厳選し空白を丁寧に埋めるようにリリースを重ねたことで、これまでの勢いこそ落ち着いたものの、Switchは引き続き一定の存在感を保ち続けました。

こうして2024年度は大型の完全新作が控えられる中、任天堂はSwitchの価値を保ちつつ次の世代へと備えた一年となりました。

2023年度から2024年度にかけて、Nintendo Switchは発売から8年目を迎える中でも安定した稼働を続けていきました。売上は徐々に落ち着きを見せながらも、長期にわたって高い水準を維持しています。2023年度、Nintendo Switchは前年度に引き続き好調を維持し、売上は1兆6000億円台、営業利益は5000億円台を記録しました。2024年度は販売台数の減少もあり、売上は1兆2000億円、営業利益は3000億円の見通しとなっていますが、発売から8年が経過したハードとしてはいまなお異例の粘り強さを見せています。

その背景には、最後まで力を注いだタイトル群の存在があります。『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』はSwitchの技術的限界に挑んだ一本として、『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』は2Dマリオの完全新作として幅広い層にアピールし、いずれも「最後まで本気を貫いた任天堂」を象徴する作品となりました。

ソフト売上ランキングには、発売初期の代表作とSwitch後期の新作がともに上位に名を連ねています。時期やジャンルを問わずヒット作を生み出し続けてきたことこそ、Switchの最大の強みでした。

このようにNintendo Switchは、ひと握りの大作に頼らず多様な魅力を育て上げてきたハード。8年にわたるその歩みは、ゲームの歴史においても特別な存在感を残しました。

そして、2025年。Switch2の登場によって、任天堂ハードの歴史は新たな章を迎えます。Switchで築いた信頼と期待は、これからも次の時代へと受け継がれていくことでしょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次