【完全解説】よくわかる日本のギャルゲー史40年 1981~2025

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【ゲーム会社史】そのゲというyoutubeチャンネル様に、【完全解説】よくわかる日本のギャルゲー史40年 1981~2025よくわかるという動画の台本を提供しました。

この記事は、その台本の ( 初稿の ) ベタ貼り記事です。文字情報でザザっと追いたい方用です。

実際の動画では投稿主様の方で一部内容修正されているので、動画にはない情報も含みます。補完関係になっているので、流し読みでも構わないのでご覧いただけたらと思います。

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ギャルゲーの始まり

そもそも「ギャル」とはなにか。ギャルというと、ギャル系メイク・ファッションに身を包んだ、いわゆる「ギャル系タレント」のイメージが先行する方も多いと思いますが、元々ギャルとは若い女の子全般を指す用語。1970年代にはもう言葉として定着していたとされています。当時のゲームはというとちょうど『スペースインベーダー』が流行っていた頃で、魅力的な「ギャル」を描写するにはまだハードのスペックが足りていませんでした。

1980年代に入ってファミコンが発売されると、そのリーズナブルな価格設定と強力なソフトラインナップにより、一般家庭において爆発的に普及していきました。しかしファミコンは、安価なハードとあってスペックは抑え気味。マシン性能の観点で言えば、高価格かつマニア向けのパソコン(当時はマイコンと呼ばれていた)の方が圧倒的に上手でした。1981年にNECより発売されたPC-8801は定価228,000円と家庭用ゲーム機とは比較にならないくらい高かったのですが、当時のパソコンオタク(ナイコン族)の間でヒットし、100万台近い売上を誇ったとされています。

このPC-88シリーズ上ではコアゲーマー向けのソフトが展開されていったのですが、そのラインナップにはいわゆるアダルトゲームも含まれました。本動画のテーマである「ギャルゲー」はあくまで全年齢を対象としたゲームジャンルですが、特にゲームシステム面においてアダルトゲームから多大な影響を受けています。中でも1985年にJAST(ジャスト)という会社よりリリースされた『天使たちの午後』という作品は、フラグや分岐を含むテキストアドベンチャーの形式を採用しており、後の作品の草分けとされています。ちなみに本作では学園のアイドルを口説き落とすストーリーが描かれるのですが、その口説き落とすまでの過程が非人道的すぎることでも知られています。

天使たちの午後はゲームシステム的に非常に先進的でしたが、その流れを汲んだギャルゲーが登場するのは、実はしばらく先です。ここでは一旦、1980年代当時に「ギャルゲー」と呼ばれていた作品を紹介していきたいと思います。動画冒頭でも述べた通り「ギャル=若い女の子」であり、当時「ギャルゲー」というと「若い女の子キャラをウリにしたゲーム全般」を指す言葉として認知されていました。現代では大なり小なり恋愛要素が絡むゲームをギャルゲーと呼ぶことが多いのですが、1980年代の頃は必ずしもそうではなかったんですね。1986年にリリースされた『夢幻戦士(むげんせんし)ヴァリス』、『マドゥーラの翼』、『アテナ』は、いずれもビキニアーマーを着た女戦士がウリの「ギャルゲー」として人気を博しました。いずれも敵を倒しながら進んでいく横スクロール型のアクションゲームなのですが、ゲームプレイ中の主人公はデフォルメされており、現代の感覚からするとギャル要素はほとんど感じられません。当時のプレイヤーたちは、パッケージなどに描かれたアートワークから戦う美少女を想像しながら遊んでいたようです。しかしながら夢幻戦士ヴァリスに関しては高スペックなPC-88向けソフトだったこともあり、他2作品には無かったカットシーンが盛り込まれていました。女の子の顔がアップで映る物語シーンと、横スクロールのアクションシーンを交互に行き来する作りだった無幻戦士ヴァリスは、ギャルゲー史において特に重要な作品だとされています。

ヴァリス以降、若い女の子をウリとしたギャルゲーは数多くリリースされていきましたが、その多くはギャルで客を釣ることに夢中になるあまり、肝心なゲーム部分のクオリティが低かったそうです。そのため、当時「ギャルゲー」という言葉はあまりポジティブな意味では使われていませんでした。しかし、そうしたレッテル貼りの逆境を跳ね返した名作ギャルゲーもいくつか存在しています。

1991年にGAINAX(1995年にアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を制作することになるガイナックスです、昔はゲームも作っていました)よりPC-98シリーズ(前述のPC-88シリーズの後継PC)向けソフトとしてリリースされた『プリンセスメーカー』は、育成シミュレーションゲームという新しいジャンルを切り開いた名作として知られています。本作の主人公は、世界を救った勇者。平和が訪れた世界での新たな使命は、10歳の遺児を娘として引き取り養育することでした。娘に勉強や習い事をさせたりすることで、知力や気品といったステータスを伸ばしていき、立派な女性に育て上げるのがゲームの目的。ステータスの成長を楽しむゲームといえばRPGジャンルが真っ先に思い浮かびますが、当時は粗悪乱造のタイトルが多く、RPGに対して食傷気味のゲーマーも多かったそうです。そんなタイミングで市場投下された本作は、旧来のRPGとは異なる、新しいステータス管理の遊びを提供したことで人気を博しました。

プリンセスメーカー発売から1年が経った1992年には、ジャパンホームビデオよりPC-98シリーズ向けソフト『卒業 ~Graduation~』がリリースされました。本作の主人公は高校3年生のクラスを受け持つ教師。お嬢様・不良少女・勉強は得意だけど病弱な子、といった個性的な5人の女子生徒を指導し、彼女らが思い思いの進路に向けて巣立っていくのをサポートするのがゲームの目的。彼女たちの卒業をもってエンディングとなるのですが、学力や知力といったパラメータが高ければ一流大学に進学し、逆に低ければ水商売の道を選択するとあって、進路の振り幅が話題を呼びました。またプリンセスメーカーでは1人のみだった育成対象が、一気に5人にまで増えたことも本作の特徴。誰か一人に構いすぎると他の子がグレてしまうため、戦略的に5人を育成する必要があり、シミュレーションゲームとしての深みが増しました。そこに魅力的なキャラクター人気も合わさったことで、本作は大変な人気を博しました。

『卒業』がリリースされた半年後の1992年暮れには、elf(エルフ)よりPC98シリーズ向けソフト『同級生』がリリースされました。本作は『プリンセスメーカー』や『卒業』と異なりアダルトゲームなのですが、後に成年向けシーンがカットされた移植版(ギャルゲー)もリリースされています。パッケージに描かれた物憂げな表情を浮かべる美少女が印象的な本作は、実は竹井正樹(たけいまさき)氏という『卒業』と同じイラストレーターが担当した作品としても知られています。しかしゲームシステムは全く異なり、『卒業』がシミュレーションゲームだったのに対し、本作はアドベンチャーゲームでした。プレイヤーは主人公である男子高校生を操作して街に繰り出し、行く先々で女の子との会話を楽しみ、そこで選んだ選択肢によって物語が分岐していきました。ちなみにこのゲームシステムは、前述の『天使たちの午後』以降のアダルトゲームにおいて進化してきたアドベンチャーゲームの系譜です。

『同級生』で描かれたのは、ひと夏の恋でした。夏休み前半バイトに明け暮れていた主人公はゲーム開始時点でいくらかお金を持っているのですが、このお金を上手にやりくりしながら夏休み後半8/10~8/31までの3週間を過ごすことになります。14人ものヒロイン候補と心を通わせ、夏休み最終日に意中の一人に告白する、というのが本作のストーリー。それまでのアダルトゲームと異なった点は、ヒロインとの恋愛がしっかりと描かれた点、そして最終的に一人の女性と結ばれるエンディングを迎える点でした。それまでのアダルトゲームは即物的なナンパものが多く、作品によっては恋愛要素も含むものも存在していましたが、あくまで恋愛「要素」でした。恋愛そのものがメインに据えられた本作はアダルトゲームの枠を超え、恋愛ゲームの草分け的存在として大きな話題を呼び、アダルトゲームとしては異例の10万本もの売上を誇ったとされています。

ここまでプリンセスメーカー・卒業・同級生という3本のギャルゲーを紹介してきましたが、これら3作品をミックスしたギャルゲーの大傑作が1994年に生まれることになります。ギャルゲーブームを引き起こしたその作品は、『ときめきメモリアル』です。

ギャルゲー傑作『ときめきメモリアル』

『ときめきメモリアル』は1994年にコナミよりPCエンジン向けソフトとしてリリースされました。当時のコナミといえば、『グラディウス』や『悪魔城ドラキュラ』、『METAL GEAR』といった硬派なゲームメーカーの印象。そんなメーカーがいきなりギャルゲーを出すとあって、発売前は全く注目されていないタイトルでした。その状況に輪をかけたのが、1994年という発売時期。この年の11月にはセガサターン、12月にはプレイステーションが発売されましたが、その半年前にリリース予定だったときメモは次世代ハードの話題に埋もれがちでした。ちなみにときメモの対応ハードであったPCエンジンもPC-FXという次世代ハードを予定していたため、本作はハード末期に滑り込みで登場した作品でした。

発売時期に関しては紆余曲折があったと言います。当時コナミ内部では終わりゆくPCエンジンに向けたソフトの開発をいくつか取りやめる動きがあったらしく、ときメモも例に漏れず仕分けの対象となったそうです。しかし上層部より仕分けを命じられた途中参加のプロデューサーが、ときメモ開発現場の熱に打たれたことで、開発続行が決まったと言います。今だから分かることですが、この時の判断はまさにギャルゲーというジャンルの行く末を大きく左右した判断でした。

無事開発続行となったときめきメモリアル。しかし情けで継続させてもらえたプロジェクトとあって、宣伝費は少なかったようでした。当時のゲームソフトの広告宣伝と言えばゲーム雑誌上での作品紹介がメイン。ときメモの場合は割り当てられた誌面が少なく、そこで伝えられる情報量には限りがありました。そこでときメモチームは、狙ってか図らずしてかは分かりませんが、本作のシミュレーションゲームとしての側面を強調して宣伝しました。シンプルに、主人公である男子高校生を育成して幼馴染の「藤崎詩織(ふじさきしおり)」を落とすゲーム、と紹介したわけです。これを読んだコアゲーマーは「育成対象が主人公自身に変わったプリンセスメーカー・卒業みたいなゲームか」と受け取ったそうです。当時はギャルゲーというだけで低クオリティのゲームではないかと疑われがちな時代。そうした中ギャルゲーのノウハウを持たないコナミが、末期ハード向けにギャルゲーをリリースするとあって、「コナミの乱心か」、「少し目先を変えただけの有象無象のギャルゲーだろう」と想像されていたわけですね。

優秀人材の流出が続いてしまい、大きなダメージを受けたActivision。残った設立メンバーはCrane氏とCEOのLevy氏のみとなってしまいました。苦しい時期でしたが、なんとか会社を立て直すべく、今後はAtari 2600向けではなくPC向けのゲームソフト開発に注力していくという新しい会社方針が決まりました。そしてこの新しい戦略を加速させるために、CEOのLevy氏は『Infocom』というゲーム会社の買収を決めます。

しかし本作の評価は、発売直前のレビューを境に好転していきます。当時『電撃PCエンジン』上に掲載された岩崎啓眞(いわさきひろまさ)氏(ハドソンでゲームクリエイターとしても活躍)のレビューが名文なので、抜粋して引用させていただきます。

(前略)パラメータを上げるのは「本命の女の子に好かれるため」で、間違っても目的ではない。それが証拠にパラメータの上げ方に戦略はあるけど、上げるのに苦労することはまったくない。それに加えて、高校生活をエンジョイするために莫大な数のイベントが用意されている。軽いAVG風味のデート(スポット多数)、修学旅行(3カ所から選ぶ)、縁日(3年間すべて違う)、文化祭(催し物多数)、運動会、パーティ、誕生日、バレンタインデー、その他多数。特別なグラフィックも数十枚以上あるし、あげくの果てはミニゲーム、シューティング、RPG並のバトルまで用意されている。ひとつひとつはあっさりめだが、いつもイベントが起きていると感じるほどの密度のうえに、2度3度クリアしたくらいでは半分も見られない量は、まさにCDならではの圧倒的な力だ。(後略)

岩崎氏は当初本作を「藤崎詩織を落とすシミュレーションゲーム」としか思っておらず、あくまでレビューを書くため(仕事のため)に重い腰を上げてプレイを開始したそうです。しかしゲームを始めてすぐに、登場するサブヒロインの数に驚いたと言います。そしてこの女の子たちが実はサブヒロインではなく、藤崎詩織に並ぶメインヒロインとして扱われていることに気づくと、このゲームは只者ではないと思い始めます。極めつけとなったのは、デート中の表情だけでなく、電話口の声色まで好感度によって変化していた点。製作陣の執念を感じさせる異様なまでの作り込みに絶句したと言います。岩崎氏を驚かせたこれらの要素は、『同級生』の影響で盛り込んだ恋愛アドベンチャー要素を磨き上げたものでした。しかし発売前の宣伝ではその存在が伏せられていたため、実際にプレイしてみて初めて気が付くサプライズとなりました。意図してそうしたのか、宣伝予算の関係で図らずもそうなっただけなのかは不明ですが、結果的に非常に効果的なプロモーションとなりました。

コアゲーマーが多いハードとして知られるPCエンジンとあって、この岩崎氏の絶賛レビューを目にした方は相当多かったようです。加えて黎明期のインターネットの掲示板において高評価の口コミが爆発的に広がっていったことで、本作はそれまでギャルゲーを毛嫌いしていた自称硬派なコアゲーマー層の取り込みにも成功しました。このようにして、ときめきメモリアルの人気は徐々に広がっていき、コナミの予想を超えて売れに売れました。やがて本作はPCエンジンというニッチハードを飛び越え、プレイステーションやスーパーファミコンといった様々なハードへと移植され、最終的に100万本を超える売上を達成しました。同級生がアダルトゲームとして異例の10万本を売上げたと先ほど述べましたが、ときメモはそれをダブルスコアで上回ったわけですね。ちなみに同級生はときメモに影響を与えた作品として知名度を上げ、ときメモ発売の翌年である1995年にPCエンジン向けに全年齢対象ギャルゲーとして移植されています。PCエンジンはこの他にも、無幻戦士ヴァリス・プリンセスメーカー・卒業といった数々のギャルゲーのリメイク版・移植版をラインナップしており、まさにギャルゲー御用達ハードでもありました。

ここで少し閑話を挟みます。ときメモが影響を与えたのはギャルゲーのみならず、同じコナミからリリースされている野球ゲーム『パワフルプロ野球』シリーズにも多大な影響を与えました。意外にも初代パワプロはときメモと同じ1994年のリリース(パワプロが2カ月年上)なのですが、ときメモが影響を与えたのは1996年に発売された『パワプロ3』。今ではパワプロのメインモードとして知られる『サクセスモード』が初登場した作品です。まだアマチュアの選手を育成してプロ野球選手を目指すシミュレーションモードとして知られる『サクセス』ですが、本モードはときメモをそっくりそのまま野球に落とし込んで作ったとパワプロ製作陣が語っています。いかにときメモが完成された育成シミュレーションであるかというのを、如実に語るエピソードです。ちなみにこのサクセスモード、後に進化していって複数の彼女候補とデートして付き合えるようにもなっていきます。彼女からの誕生日プレゼントで野球選手としての能力が大幅に伸びるとあって、プレイヤーはこぞって彼女を作ろうとするのですが、選手強化を建前に普通にギャルゲーとして楽しんでいたゲーマーも多いはず。本作からギャルゲー沼にハマっていった人も多いのではないでしょうか。このように、他ジャンルの皮を被ってはいるものの、実はギャルゲー要素も色濃い作品は枚挙にいとまがありません。世界的に人気な作品で言うと『ペルソナ』シリーズもギャルゲー要素を含む作品ですが、もしかすると全世界で1000万本ものセールスを記録した『ペルソナ5』は世界で最も売れたギャルゲーと言えるかもしれません。

閑話休題、話を本筋に戻します。ときメモの大ヒットにより裾野が一気に広がったギャルゲーというジャンル。様々な作品が二匹目のドジョウを狙いましたが、その中でも印象的だった作品をいくつか紹介していきたいと思います。まずは、人によってはときメモ以上の強烈な思い出となったであろう、『サクラ大戦』から紹介したいと思います。

ときメモ以降のギャルゲー変遷

1996年にセガより発売されたセガサターン向けソフト『サクラ大戦』は、セガが自社ハードのキラータイトル(ハード普及を強烈に促進する強力ソフト)にすべく肝いりで企画した作品です。製作陣が豪華な作品として知られており、PCエンジンのキラーソフト『天外魔境』シリーズを手掛けた広井王子(ひろいおうじ)氏をプロデューサーとして招聘した他、音楽には田中公平(たなかこうへい)氏、キャラクターデザインには藤島康介(ふじしまこうすけ)氏、脚本にあかほりさとる氏という錚々たるメンバーを揃えました。本作の舞台は架空の正(たいしょう)時代の日本。モチーフは現実の大正時代なのですが、スチームパンクなロボットが闊歩する世界観です。主人公の大神一郎(おおがみいちろう)は秘密部隊『帝国華撃団』(ていこくかげきだん)所属の軍人。帝国華撃団・花組に所属する六人の女性隊員を指揮して悪の組織『黒之巣会』(くろのすかい)と対決するストーリーが描かれました。

本作の特徴はなんといっても個性的な女性キャラたち。ときメモや同級生では10人以上のヒロインが存在していましたが、本作では6人と少数精鋭。その代わりいずれもキャラが立ちすぎるほど立っており、その分熱狂的なファンが数多く生まれたと言います。ゲームシステムはというと、女性隊員たちとの交流が描かれるアドベンチャーパートと、霊子甲冑(りょうしかっちゅう)というパワードスーツ(のようなもの)に身を包んで敵と戦闘するパートが交互に描かれる作りになっていました。アドベンチャーパートにおいて仲良くなった隊員は戦闘時のステータスが上昇するという仕様で、両パートが相互作用する面白いシステムが好評を博しました(とはいえ戦闘は基本ヌルかったとも)。

また本作はテレビアニメをゲームに落とし込んだ作品としても知られており、戦闘パート終了後にはアイキャッチ(テレビアニメのCM前後に挟まるヤツ)風のセーブ画面が表示され、セーブをすると次回予告が流れました。全10話構成の中盤ではメインヒロインを選ぶイベントが発生し、以降はストーリーが分岐し異なるエンディングにつながっていきました。アニメとゲームが融合したストーリーは、長らくアニメ畑で活躍されてきた広井王子氏とあかほりさとる氏がいたからこそ実現したとされています。また印象的すぎる主題歌にも触れないわけにはいきません。『檄!帝国華撃団』(げき!ていこく~)はゲーム本編だけでなく、『サクラ大戦歌謡ショウ』という舞台でも披露されました。声優たちがリアルイベントで歌って踊った歌謡ショウは、現代では当たり前となった声優ライブの先駆け的存在としても知られています。

ときメモが作り出したブームに乗っかって数多くのギャルゲーが生まれましたが、その中でも確かな差別性を打ち出したサクラ大戦は大変な好評を博しました。特に1998年に発売されたナンバリング作『2』ではハーフミリオンの売上を達成したと言います。しかし2001年にリリースされた次作『3』では、一転して売上がほぼ半減してしまう大苦戦を強いられました。実はその2年前の1999年には、『ときメモ2』も前作から売上半減という憂き目に遭っています。しかし、サクラ大戦3・ときメモ2いずれも作品の出来自体は好評でした。なのになぜ非常に厳しいセールスとなってしまったのか。実はある一本のギャルゲーが影響していると言われています。

1998年にNECインターチャネルより発売された『センチメンタルグラフィティ』は、ときメモ・サクラ大戦が作り上げたギャルゲーブーム最高潮の頃にリリースされた作品です。本作はこれまでのギャルゲーの中でも最大のプロモーションが打たれ、ゲーム本編の発売に先駆けて小説やドラマCDなどのメディアミックスが大々的に展開されました。キャラクターグッズも売れに売れ、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いを見せていたのですが、大本命であるはずのゲーム本編が発売されるや否やこの盛り上がりは急速に萎んでいきました。ゲームのクオリティが大変低かったことで、過剰な宣伝に熱狂していたギャルゲーファンの熱が一気に冷めていったんですね。こうしてギャルゲーブームは下火になっていき、本来であればもっと売れたはずのときメモ2・サクラ大戦3は苦戦を強いられたのでした。

センチメンタルグラフィティが旧来のギャルゲーブームに暗い影を落としていた最中、入れ替わるようにして存在感を高めたのがサウンドノベルをベースとした新しいギャルゲー、もといアダルトゲームの全年齢版移植でした。1996年にLeaf(リーフ|現アクアプラスのブランド名)が手掛けた『雫』(しずく)から始まったアダルトゲームの全盛期についてはまた別の機会に譲るとして、その流れの中で生まれた重要なギャルゲーを挙げていきます。まずはLeafの初期三部作の最後の作品『ToHeart』(トゥハート)。元々1997年にアダルトゲームとしてリリースされた際に5万本を売上げた本作ですが、1999年に全年齢対象ギャルゲーとしてPS向けに移植(リメイクとも)されると、なんと売上倍増の10万本セールスを達成しました。それまでのLeaf作品の雰囲気とは打って変わって明るい学校生活が描かれた本作は、旧来のLeafファン以外の層をも引き付けることに成功し、新たなギャルゲーの機軸となりました。

Leafに続いたメーカーとして、Key(キー|ビジュアルアーツのブランド名)を挙げないわけにはいきません。「泣きゲー」というジャンルを作り上げたとされるKeyですが、初期三部作の最終作である『CLANNAD』(クラナド|2004年)は発売当初より全年齢向け作品として展開された、れっきとしたギャルゲーです。葉鍵(はかぎ|LeafとKeyをまとめて葉鍵といいます)によって人口が拡大したノベルゲーム界では、今まで以上に同人活動が活発化。数多の同人作品が生まれたのですが、その中で特に重要な作品といえば、竜騎士07(りゅうきしれな)氏による傑作サイコミステリー『ひぐらしのなく頃に』(2002年|暴力描写がエグいですが全年齢)が挙げられます。また時を同じくして同人活動をしていたTYPE-MOON(タイプムーン)からは、2007年に『Fate/stay night [Réalta Nua]』(フェイト ステイナイト レアルタ ヌア|Fate/stay nightの全年齢版移植|新たにボイスが収録された)がリリースされました。また2009年には、5pb.(ファイブピービ―)が手掛けたXbox 360(エックスボックス サンロクマル)向けソフト『STEINS;GATE』(シュタインズゲート)が新たに登場。TVアニメで一気にブレイクした神シナリオゲーとして知られる本作ですが、原作ゲームではヒロイン毎の個別エンドが存在しています(良シナリオなのにアニメではカット…)。ただしファンディスクの方がギャルゲー感満載なので、本編をギャルゲーとするかは議論になるかもしれません。

ここまでノベルゲーム体のギャルゲーを一気に紹介しましたが、これらの作品の裏では、ある重要なギャルゲーが産まれていました。それは2005年にアーケード稼働し、後にあらゆる媒体でファンを拡大していった『アイドルマスター』シリーズです。アイドルを育てるゲームである本作は、「恋愛が絡まないのでギャルゲーではない」と言う人も多いと聞きます。しかし恋愛抜きに女の子を育てるというのは、この動画の冒頭で触れたプリンセスメーカーと卒業の系譜と言えます。若い女の子がウリのゲームという本来の意味に立ち返ると、やはり本作もギャルゲーなのだと言えるでしょう。このように恋愛抜きに「頑張る女の子を推す」タイプのギャルゲーは、アイドルマスター以降勢いづいていくことになり、『艦隊これくしょん -艦これ-』(2013年)や『ウマ娘 プリティーダービー』(2021年)といった作品が後に続いています。

一方で、ときメモ・サクラ大戦の系譜、恋愛メインのギャルゲーも徐々に復活してきていました。その流れが結実したのが、2009年。エンターブレインから『アマガミ』、ディースリー・パブリッシャーから『ドリームクラブ』、そしてコナミから『ときメモ4』と『ラブプラス』が一斉にリリースされました。これらの作品のうち、ロングセラーとなったアマガミと、爆発的なブームと引き換えに短命に終わったラブプラスは対称的な作品ではないでしょうか。アマガミでは男子高校生を主人公に、幼馴染・同級生・先輩・後輩との恋愛が描かれました。こう言うと正統派ギャルゲーのように聞こえますが、主人公もヒロインも思わず突っ込みたくなる変な側面を併せ持っていて、ゲーム実況映えするタイトルとして今なお数多くの新規プレイヤーを獲得しています。一方ラブプラスは付き合い始めてからが本番のギャルゲーという謳い文句で一世を風靡したタイトルです。ニンテンドーDS向けのタイトルとして開発された本作は出かけ先でもいつでも遊べるとあって、当時は街の至る所でDSを縦持ちにしてカノジョとコミュニケーションにいそしむカレシが散見されました。

動画冒頭に紹介したヴァリスの系譜、すなわち女主人公モノのギャルゲーも復権の雰囲気を漂わせています。2019~2023年にかけてコーエーテクモゲームス(の「ガスト」ブランド)よりリリースされた『ライザのアトリエ』3部作は、200万本もの売上を達成しました。元々乙女ゲーの要素を含む経営シミュレーションとしてスタートしたアトリエシリーズが、20年の時を経てギャルゲーRPGとして過去最大のセールスを叩き出したのには驚いたファンも多かったようです。

VRという新技術を取り入れたのに低調に終わってしまった『サマーレッスン』(2017年)や、衝撃な展開が実況映えして人気を博した変わり種『ドキドキ文芸部!』(2017年|流行ったのは2021年のリマスター版のようです)、更には記憶に新しい正統派ギャルゲー『バニーガーデン』(2024年)など、今なお新規IPギャルゲーの挑戦は続いています。今後新たに産まれるギャルゲーにも期待していきましょう。

てきたABが、最後はさらに大きな会社に飲み込まれてしまったというのは弱肉強食の世界を彷彿とさせます。しかし、Microsoftの子会社になったからと言ってABがなくなるわけではありません。Kotick氏は去り、その後MicrosoftによってABの人員整理もなされたとあって苦しい船出ですが、血の入替えをもってここから新しいABが始まるのだと思います。そのように期待している根強いファンのためにも、ABの再起が待たれています。

参考文献

興味ある方は折りたたみを展開ください。

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https://www.youtube.com/watch?v=SaZRgrw74RE

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