【完全解説】ガンダムゲームの歴史 1981~2025

  • URLをコピーしました!

【ゲーム会社史】そのゲームを作ったのはというyoutubeチャンネル様に、【完全解説】よくわかる『ガンダムゲーム』激動の進化史 1986~2025という動画の台本を提供しました。

この記事は、その台本の ( 初稿の ) ベタ貼り記事です。文字情報でザザっと追いたい方用です。

実際の動画では投稿主様の方で一部内容修正されているので、動画にはない情報も含みます。補完関係になっているので、流し読みでも構わないのでご覧いただけたらと思います。

こちらの記事もオススメです。

あわせて読みたい
歴代のThe Game Awardsを振り返る【PS5世代編】 歴代のThe Game Awardsを和ゲー中心にまとめました。GOTYだけでなく、GOTYノミネート作やGOTY以外の受賞作まで網羅するようにしたので、各年の主要タイトルをザッと把握できる記事になったと思います。
あわせて読みたい
龍が如くのロードマップを勝手に予想してみた 龍が如くは今どきのゲームタイトルでは唯一無二と言えるハイペースで新作を供給し続けているIPです。ナンバリング最新作・龍が如く8が最大のヒット作となった今、今後のIPロードマップが気になったので勝手に予想してみました。

「マンガのブログ」という別ブログもやっています。

マンガのブログ
マンガのブログ | 次に読みたいマンガが見つかるブログ オススメのマンガを紹介するブログです。1巻あたり平均部数のランキングや、漫画賞受賞作の一覧などをまとめています。次に読みたいマンガが見つけられるブログを目指して...
目次

はじまり

1979年に放映されたTVアニメ『機動戦士ガンダム』は、その後続編を含む数多くの関連作品を生み出し、ガンダムシリーズという超巨大IPにまで成長していきました。全盛期と比べるとその人気は落ち着いてしまった感もありますが、今なお新作が製作され続けており、数年後には50周年記念も控えています。その長い歴史の中で、ガンダムのゲームもたくさん作られてきました。初代ガンダムが産まれた1979年は、ちょうどゲームの歴史から言っても黎明期。ゲームの技術の進歩に合わせて、実に多様なガンダムゲームが生まれていきました。本動画では、ガンダムのゲームに焦点を当てて、その歴史を徹底解説していきます。早速内容に入っていきましょう。

ガンダムゲームの歴史の前に、ガンダムという作品それ自体の成り立ちを簡単に紹介したいと思います。

初代ガンダム、いわゆるファーストガンダムは、1979年4月から翌年1月末までの10カ月間放映されたTVアニメです。この「10カ月」というのは何とも中途半端に感じられますが、それもそのはずで、当初1年間の放映を予定していたのに打ち切りを食らっているんですね。単純な勧善懲悪ものではない、ビターなストーリーであったために、小学生ら子どもの人気を獲得しきれず。同時展開していたオモチャの売行きが渋かったことで、打ち切りが決まったと言います。しかし中高生以上の人気は上々だったそうで、特に打ち切りが決まって以降の物語終盤は展開がアツかったこともあって、人気はうなぎ上りに上がっていったそう。その勢いのまま、完結のわずか2カ月後には再放送が開始。口コミによって人気は更に広がっていき、TV版の物語を再構成した劇場版三部作の制作が決定。1年後の1981年から映画が順に公開されていき、社会現象になりました。

さて、このファーストガンダム人気の流れの中で、初めてのガンダムゲームが生まれています。日本初のマイコン雑誌『I/O(アイ・オー)』(1976創刊~2025年現在も刊行中)の別冊、『マイコン・ゲームの本』という雑誌内で発表された『ガンダム・ゲーム PART1』という作品が最古のガンダムゲームであるとされています。発表されたのは1981年3月で、ちょうど劇場版が公開された時期と重なります。この雑誌ではたくさんのゲームが掲載されていたのですが、いずれも読者が投稿したものであり、本作もガンダムのいちファンによって制作されたものだったようです。ジャンルはシューティングで、敵機を照準に入れて落ち落として得たスコアを競うゲームでした。この頃は著作権周りが大らかだったようで、3カ月後にはまた別の雑誌で、また別の方がガンダムのゲームを発表しています。いずれもPC-8001というパソコン向けのゲームでして、当時は個人が趣味で開発したゲームを雑誌に掲載するという、同人的な作品発表形態が一般的でした。ちなみに当時他にどんなゲームが世に出ていたかというと、同じ年に『ドンキーコング』のアーケード版がリリースされています。本作は任天堂の長い歴史で言ってもごく初期の作品であり、当時はゲームというジャンルそれ自体、まだまだ生まれて間もない時代でした。

その後は、今現在もガンダムIPを保有するバンダイから、公式のPCゲームがいくつかリリースされました。また、ゲーム&ウォッチに代表される携帯型のLSIゲームにおいても、ガンダムゲームは展開されていきました。しかし後年のバンダイが「ガンダムシリーズの第1弾ソフト」と銘打っているのは、1986年にファミコンより発売された『機動戦士Ζガンダム ホットスクランブル』(「Z」はゼータと読みます)です。本作は家庭用ゲーム機向けにリリースされた最初のガンダムゲームになります。

こちらの作品は、その名の通り『機動戦士Zガンダム』を題材とした作品です。Zガンダムはファーストガンダムの直接の続編で、1985年にTV放映されたガンダムシリーズの2作目。このZガンダムの熱心なファンであったゲームクリエイター・遠藤雅伸(えんどうまさのぶ)氏がバンダイに直接掛け合い、実現したのが本作ホットスクランブルでした。遠藤氏のインタビューによると、バンダイからはファーストの方が良いのでは?と言われたそうですが、遠藤氏がZをやりたい!と押し通したそうです。その遠藤氏ですが、ナムコの名作シューティングゲーム『ゼビウス』を開発した、超有名ゲームクリエイターとして知られています。1985年にナムコを退社した遠藤氏が、独立間もない時期に手掛けたのが本作でした。ジャンルはFPSチックなシューティングと、横スクロールのアクションシューティングのハイブリッドで、2つのゲームモードを行ったり来たりするような作りでした。元々予定していたゲームモードはFPSモードの方のみだったそうですが、子どものテスターからは難易度が高いうえ「(FPSなので)ガンダムが見えない」と不評だったため、横スクロールモードが後から追加開発されたと言います。このFPSモードは先ほど紹介した最古のガンダムゲームと見た目似ていますが、本作は奥行方向の3D演算にこだわった高品質のFPSを実現しています。ファミコンという制約の多いハードでこの出来ですので、時代にマッチしていればさらに評価が高まっていた可能性がありそうです。

SDガンダムとウォーシミュレーション

ホットスクランブル以降は、実に数多くのガンダムゲームが展開されていきました。その全てはとても紹介しきれないので、ここからは主要なゲームシリーズを時代順にピックアップしながら紹介していきたいと思います。

まずは『SDガンダム GGENERATION(ジー・ジェネレーション)』シリーズについて。本作は数々のガンダム作品のストーリーを追体験できるシミュレーションゲームとして、ガンダムゲームの中でも特に高い人気を誇っているシリーズです。

本シリーズの説明に先立ち、『ジージェネ』のタイトルにもなっている「SDガンダム」について簡単に説明したいと思います。SDとはスーパー・デフォルメの略でして、2頭身にデフォルメされた可愛らしいガンダムキャラをSDガンダムと呼びます。元々はキン肉マン消しゴム、いわゆるキン消しのブームに乗っかる形で展開された『ガン消し』のデザインがSDのもととなったと言われています。ボンボン(マンガ雑誌)でのマンガ展開やカードダス展開によって、SDガンダムの子ども人気は高まっていきました。1988年に公開された映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』はアムロとシャアの最後の戦いを描いた名作として知られていますが、実はそのシリアスな作品と抱合せでコメディチックなSDガンダムアニメも同時公開されています。ガンダム自身が人格を持ち、パイロット無しでハチャメチャに動き回る世界観のSDガンダムは、逆シャアの前座として楽しまれました。

元々は本家ガンダムを2頭身デフォルメにしてデザインされたSDガンダムでしたが、徐々に独自のキャラクターも制作されていきました。その代表が、和風鎧を着た『武者ガンダム』と、西洋風の甲冑を着た『騎士(ナイト)ガンダム』でして、これらはゲーム化もされました。武者ガンダム主役のウォーシミュレーションゲーム『SD戦国伝』や、騎士ガンダム主役のドラクエライクRPG『SDガンダム外伝』などが人気を博しました。それぞれゲームボーイとファミコンでシリーズ展開されましたが、いずれのハードもリアルなガンダムを描写するにはスペック不足だったため、SDガンダムを主役に据えることで制作コスト面を抑えようとしたのだと推察されます。そのようなゲーム制作上の都合と、SDガンダム人気の高さが上手に噛み合ったことで、SDガンダムゲームは活発化していきました。

そうしたSDガンダムゲームの流れの中で生まれたのが、1996年の『SDガンダムジェネレーション』というウォーシミュレーションゲームでした。本作はSDガンダムを採用してはいるものの、その内容はいたってシリアス。ガンダムは喋らず、パイロットが乗り込んでいるという設定は本家と同じで、ガンダムの見た目がSDであること以外は非常に硬派なつくりでした。本作は分作方式で発売され、ファーストガンダムのストーリーを追体験できる『SDガンダムジェネレーション 一年戦争記』や、Zガンダムのストーリーを追体験できる『SDガンダムジェネレーション グリプス戦記』など計6作品が次々にリリースされていきました。

そしてこのSDガンダムジェネレーションで確立されたゲームシステムがより洗練されて出来上がったのが、『SDガンダム GGENERATION』でした。本作は、その後20年以上続いた『ジージェネ』シリーズの第1作目として知られており、1998年にPS向けソフトとしてリリースされました。前身となったガンダムジェネレーションが分作方式であったのに対し、本作はファーストガンダムから逆襲のシャアまでのストーリーを分作無しで収録。40以上ものステージを自分オリジナルの部隊を編成してクリアしていくメインモードでは、本家アニメにおいてその場面で登場しなかったキャラを参戦させられるとあって、オリジナルアニメでは実現しなかったifの世界を楽しむことができました。プレイ開始直後は選択できるMS(ガンダムでは人型機体を「モビルスーツ」と言います)・キャラが制限されておりその数は少ないのですが、条件クリアにより全470体以上のMS・全160人以上のキャラクターを収集できるとあって、やり込み要素が高く評価されました。自分のお気に入りキャラが欲しくてゲームをやり込む中で、それまで知らなかった別作品のキャラの魅力に気が付き、今まで未視聴だったアニメにも新たに手を出す、というガノタ沼にハマるプレイヤーも続出したと言います。特にシリーズ最高傑作と名高い3作目の『SDガンダム GGENERATION-F(ジー・ジェネレーション・エフ)』は、当時まだ小説としてしか発表されていなかった『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年にアニメ映画化)のMSをも登場させ、その時点の全ガンダムを網羅した力の入れようでした。最新作は2019年にリリースされた『SDガンダム GGENERATION CROSS RAYS』ですが、ファンからは今なお次回作が望まれています。(新作ソシャゲ『SDガンダム GGENERATION ETRNAL』が長らく開発中)

さてガンダムのシミュレーションゲームと言えば、ジージェネ以外にもう1つ、『ギレンの野望』という重要なシリーズがあります。こちらも非常に評価が高く、ファンから復活を待ち望まれているシリーズです。

1998年にセガサターンからリリースされた1作目『機動戦士ガンダム ギレンの野望』は、戦闘とMS収集がメインのジージェネと比べて、より本格的なウォーシミュレーションを楽しめると話題をさらいました。例えるならばガンダム版の『信長の野望』といったところでして、「ギレンの野望」というタイトルからして明らかに影響を受けていることが伺えます。本作では、ガンダム本編でお馴染みのアムロが属する「地球連邦軍」と、シャアが属する「ジオン公国軍」の戦いが描かれるのですが、プレイヤーは連邦トップのレビル、あるいはジオントップのギレンのいずれかを主人公に選ぶことになります。軍のトップとして限られた物資の中で軍拡しながら敵軍を討って領土を広げていく、オーソドックスかつ本格的なウォーシミュレーションとなっており、手堅く面白いこのジャンルをガンダム題材で実現したとあって、ハマる人はとことんハマる名作と評価されました。特に人気だった要素は、ジージェネ以上にこだわり抜かれたif展開。作中では止む無く戦死してしまうキャラを支援することで生き永らえさせ、本来参戦できない戦場で大活躍させるといった「もしも」を楽しむことができ、シリーズファンの心をつかみました。しかし人気は長続きせず、しばらく続いたギレンの野望シリーズの展開は2011年の『機動戦士ガンダム 新ギレンの野望』を最後に休眠状態。昨今は本家本元の信長の野望でさえ売上が低下していっていることからも、シリーズの復活は厳しいと見ている方が多いとのこと。しかしそうした中でも、せめて旧作のアーカイブだけでも実現しないかとファンは待ち望んでいるようです。

格ゲー & 自社製アクションゲーム

ガンダムゲームは、そのほとんどがアクション(後ほど解説します)かシミュレーションのいずれかのジャンルに分類されます。しかし、そのどちらにも属さない尖ったタイトルも、数は少ないながら存在しました。

ここまでFC時代のSDガンダム作品・ウォーシミュレーション作品を紹介してきましたが、SFC時代に入るとなんとガンダムが闘う格ゲーがいくつか登場しました。当時はストⅡブーム真っ只中。その格ゲーブームにガンダムゲームも乗っかったわけですが、実は格ゲーブームに先に乗っかったのは本家ガンダムアニメの方でした。1994年~1995年にかけてテレビ放映された『機動武闘伝Gガンダム』(「G」は普通にジーと読みます)は、世間のストⅡブームに乗っかって企画されたとされており、それまでのガンダムシリーズが人の生き死に・戦争を描き続けてきたのに対して、Gガンでは格闘大会を勝ち抜くストーリーが描かれました。生身の人間ではなくガンダムが格闘する様は一見なんともシュールで、オールドファンからはこんなのガンダムと認めないと賛否を生みましたが、少年マンガのようなアツい展開のGガンは狙い通り低年齢層への訴求に成功し、現在では好意的な評価も多いです。そうしたGガンがアニメ展開されていたこともあって、Gガンを題材とした格ゲーが制作されたのは、ある意味当然の流れでした。格ゲーとしてのクオリティは課題もありましたが、ガンダムらしくホバーを用いたダッシュなどガンダム要素が上手く2D格ゲーに落とし込まれていました。面白いことにこのガンダム格ゲーの流れはGガンの一回きりではなく、その後の『新機動戦記ガンダムW』(「W」はウィングと読みます)以降もしばらく継続し、格ゲーとしてのクオリティも徐々に上がっていきました(開発スタジオが替わったことが大きかったようです)。これらのガンダム格ゲーは、ガンダムゲームの歴史において確かな爪痕を残しました。

さて、ここからはガンダムゲームの華ともいえる、アクションジャンルのタイトルを紹介したいと思います。特にガンダムファンの心に残った名作として、セガサターン向けソフト『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』と、PS2向けソフト『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』(「宇宙」は「そら」と読みます)を紹介したいと思います。実はこれらの作品は、いずれもバンダイ子会社ベックの「チームホワイトディンゴ」というチームによって開発されました。高い技術と深いガンダム愛を兼ねそろえた素晴らしいチームでした。

まず、BLUE DESTINYについて。本作は、本家映像作品のガンダムにおけるOVA(オリジナル・ビデオ・アニメーション|テレビや映画ではなくいきなり映像をパッケージ売りする販売方式のアニメ作品)と同じような方式で、ガンダムゲームにおいても分作でオリジナルストーリーを展開できないか、というコンセプトで企画が開始されたと言います。そうして出来上がったのが『機動戦士ガンダム外伝1 戦慄のブルー』・『機動戦士ガンダム外伝2 蒼を受け継ぐ者』・『機動戦士ガンダム外伝3 裁かれし者』の3部作でした(※ 『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』というのは後に3作がセット売りされた際のタイトル)。1996年~1997年にかけて値段抑え目・3カ月周期でリリースされたこれらの作品は、ガンダム本編に劣らない良質なストーリーと、1時点でも好評だったうえ2・3にかけて更に進化していったゲームシステムが好評を博し、合計で70万本のセールスを達成しました。この売上は、セガサターン独占タイトルとしてはあのバーチャファイターに次ぐ売上だったとされており、キラーソフトとしてハードの普及にも貢献しました。3作品で描かれたストーリーは起伏に富んでいて、1作目では暴走する謎の青いMSとの邂逅が、2作目ではその謎のMSに乗り込んでの戦いが、3作目ではライバルとの決戦が描かれました。特に3作目では本家白いガンダムとの邂逅も待っているのですが、ゲーム中の強さはまさに最強レベルで、「白い悪魔」(アニメ本編での異名)と対峙する怖さを実際に体験することができました。そうしたファン心をくすぐる作り込みによって名作評価が定着すると、後に発売されたジージェネやギレンの野望においても本作の主人公機は参戦を果たし、以降はガンダムシリーズにおける定番MSになっていきました。

このBLUE DESTINY 3部作を制作したチームは、PS2という覇権ハードにおいても『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』という名作をのこしました。2003年にリリースされた本作はファーストガンダム劇場版3部作の3作目「めぐりあい宇宙」をゲーム化したものであり、2000年発売・劇場版2作目までのストーリーが描かれたPS2ソフト『機動戦士ガンダム』の続編として制作されました。ファーストガンダムというひとかたまりのストーリーをあえて分けてリリースしたのはゲーム制作上の都合だったようで、ゲーム1作目のストーリーでは主に地上戦が描かれたのに対して、本作「めぐりあい宇宙」では主に宇宙戦が描かれました。360°縦横無尽に宇宙を駆けるガンダムの戦いを操作性良く再現するのは技術的に難しかったらしく、3年もの開発期間を要した難産のタイトルだったようです。しかしそれだけの時間をかけて作り込まれた宇宙戦の戦闘システムは非常に高品質で、「ゲームとしての面白さ」と「原作再現度」が上手く両立されていました。加えてガンダムゲームの定番となったif展開や、BLUE DESTINYに続く新しい外伝エピソードも収録されているとあって、ボリュームも十分。ファーストガンダムを描いた名作アクションとして60万本近く売上げました。

他社製アクションゲームと現行シリーズ

ここまで主に家庭用のガンダムゲームについて解説してきましたが、当然ゲームセンター向けのアーケードゲームにおいてもガンダムは展開されていきました。それらアーケード作品の中で最も重要な作品となったのが、2001年より稼働開始された『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』というタイトル。連邦側とジオン側に分かれて、2対2のチーム戦が楽しめる3Dアクションゲームとして人気をさらいました。稼働開始当時はまだ先述のPS2ソフト『機動戦士ガンダム めぐりあい宇宙』(2003年)は発売されておらず、家庭用のガンダムゲームはいずれもMSの操作性にぎこちなさを残していました。そこに登場した本作はアーケードゲームらしく高品質なアクションを実現していたため、多くのユーザーを獲得することができました。本作のセールスは非常に好調で「全国のゲームセンターを救った」とまで言われています。この表現は決して大げさではなく、当時のゲーセンは格ゲーブームがひと段落してしまったことで、ちょうど次の一手を探していた頃。経営難に陥ってしまっていたゲーセンも多かったらしいのですが、本作が稼働開始すると客足は見事に回復していったと言います。大変な人気を博した本作は、後に家庭移植版やアーケード続編などのリリースが相次ぎ、20年以上も続いていくことになる『機動戦士ガンダム vs.シリーズ』(バーサスシリーズ)へとつながっていきました。2025年現在はアーケード最新作『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス2 オーバーブースト』が稼働中ですが、近年は一見さんお断りの複雑なシステムとユーザーコミュニティにより人気は落ち着いてしまっているようです。

このvs.シリーズの初代、2001年に稼働開始した『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』を開発したのは、実はカプコンでした。ストⅡで全国のゲーセンを席巻したカプコンが、今度はガンダム vs.シリーズで再びゲーセンを盛り上げたというのは、カプコンの地力の高さを伺わせるエピソードです。しかし、そもそもカプコンというのは、ガンダムIPを抱えるバンダイのライバル。バンダムが気前よく自社IPを貸す・敵に塩を送る行為をしたのかというと、実はそうではなく、紆余曲折があったと言います。元カプコンの岡本吉起(おかもとよしき)氏がご自身のyoutubeチャンネルで語るところによると、元々は岡本氏がガンダムの生みの親・アニメ監督の富野由悠季(とみのよしゆき)氏と面会した際に「カプコンでガンダムのゲームを作って良いとなった」のが本作制作の発端となったそうです。しかしいざゲームがほとんど完成したタイミングでバンダイに話をしに行くと、今度はそんな話は聞いていないとNGをくらってしまったそうです。岡本氏はゲームの出来に自信があったので食い下がったそうですが、バンダイ側の言い分は2つ。①ガンダムゲームは綿密な発売スケジュールを組んでいるから突発対応はできない、という話と、②カプコンの作るゲームのクオリティが高すぎて他ガンダムゲームを食ってしまう、という話でした。岡本氏は①解決案として販売権はバンダイに譲ることとし、②解決策として太っ腹にも本作はソースコードごと納品するから今後のゲーム開発に役立ててもらって構わない、と話したそうです。ソースコードというとゲームの中身そのもの、つまりカプコンの技術が丸裸にされるというわけで、この提案はかなり大胆でした。しかし岡本氏が本作にかけていた思いはそれ以上だったようで、この熱い提案を受けてバンダイは本作のリリースを許可。そして前述の大ヒットにつながっていきました。

さて、カプコンがこじ開けたガンダムIPの他社貸与の流れ。実はこれ以降、他にも他社開発のガンダムゲームが続いていくことになりました。

2005年にはナムコが開発した『機動戦士ガンダム 一年戦争』というPS2タイトルが市場投下されました。ガンダムというIPが抱えるファンの多さはどのデベロッパーにとっても魅力的なようで、カプコンのとき同様やはりナムコ側からバンダイに「ガンダムのゲームを作らせてほしい」という打診があったと言います。本作に関しては最初から両社合意の上でゲーム開発が開始。「PROJECT PEGASUS」と銘打たれた本プロジェクトには潤沢な宣伝費が投入され、ガンダムゲーム初のミリオンセラーが目標に掲げられていました。肝心のゲーム内容についてですが、演出面に関しては高い評価を得ています。特に目玉となったのは、原作アニメをなぞらえたゲームプレイをすることで生じる「メモリアルアクション」という特別な演出。例えば原作第1話「ガンダム大地に立つ!!」では敵機ザクをビームサーベルで刺し貫いて倒すシーンがありますが、ゲーム最初のステージでザクをビームサーベルで倒すとアニメと同じ「メモリアルアクション」が生じます。その他にも原作愛にあふれる小ネタがたくさん収録されており、グラフィックやBGMの評価も上々です。しかし最も大事なアクションの手触りには課題を残しました。力の入った宣伝によりガンダムゲームの最高傑作を期待していたユーザーは、先述のカプコン製『機動戦士ガンダム 連邦vs.ジオン』レベルのアクションを求めていましたが、実際にはそれには及ばず。ゲームボリュームも少なさなど、その他にも欠点が目立ってしまったことで、目標のミリオンセールスは達成することができませんでした(33万本の売上でした)。しかし本作がきっかけとなってバンダイとナムコの合併が実現したというエピソードもあるなど、本作はガンダムゲームの歴史における重要な作品だったと記憶されています。

さてバンダイとナムコが合併してバンダイナムコになると、今度はコーエーがガンダムのゲームを作りたいと接触してきました。コーエー側は、得意の無双シリーズとガンダムのコラボを提案。無双シリーズとは大量のザコキャラをバッサバッサとなぎ倒していく爽快感重視のアクションゲームで、昨今はマンガ作品などとのコラボが増えています。そうしたコラボ無双の第1弾が、実はガンダム無双でした。本作はPS3のローンチタイトルとして売り出されたとあって、ソニーにとっても重要なタイトルでした。ガンダムのアクションゲームといえば、これまではビームライフル(シューティング)を主体とした作品の方が多かったのですが、本作はビームサーベルによる攻撃が基本。画面を覆い隠すほどの大量のザク(ザコMS)は本作でしか見られない光景でした。当初は期待していたほど売上げられず苦戦したそうなのですが、PS3以外のプラットフォームにもマルチに展開(後発PS2版には否定的な意見も多いですが)したことで目標売上を達成。最終的にはシリーズ計4作が制作されるヒットとなりました。

さて、ここまで多様なガンダムゲームを紹介してきましたが、最後に2025年現在も現役のシリーズとして『ガンダムブレイカー』シリーズを紹介したいと思います。本作は2013年にPS3向けに発売された1作目を皮切りに計5作がリリースされているシリーズで、最新作『4』は2024年8月に発売されました。ガンダムブレイカーの特徴は何といっても、ガンプラを題材としていること。実は本シリーズの1作目がリリースされた2013年には、ガンプラを題材とした『ガンダムビルドファイターズ』というTVアニメが展開されていました。本アニメでは、ガンダムのスタンダードである戦争ではなく、「ガンプラバトル」という架空の競技に興じる子供たちの活躍が描かれ、新しいファン層の開拓に成功しました。そしてそのアニメとの相乗効果を狙うかのように展開されたガンプラゲームが、本シリーズ『ガンダムブレイカー』だったわけです。現実で販売されているガンプラをゲーム上で入手し、自分オリジナルのカスタマイズを施した「俺のガンダム」を作り上げ、ガンプラバトルで勝ち抜いていくというゲーム。ナンバリング3と4の間でリリースされた『New ガンダムブレイカー』はユーザーのニーズを無視したリニューアルが大変な悪評をもたらしシリーズ存続も危ぶまれましたが、その後リリースされた最新作4では一部賛否もありつつもガンプラのカスタマイズ機能は過去最高品質とあって高く評価されています。

参考文献

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次