ゲーム史探訪notesというyoutubeチャンネル ( 私自身が運営 ) に、【マリオカートの歴史】百発百中メガヒット|任天堂ハードと共に進化したマリカ35年史【1992→2025】という動画をアップしました。
この記事は、その台本のベタ貼り記事です。文字情報でザザっと追いたい方用です。
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マリカを形作った3作品

これまでゲームの歴史を彩ってきた数々の任天堂ハード。1990年発売のスーパーファミコンから、2017年発売のSwitchまで、9つものハードが発表されてきました。これら全てにかかさず登場しているのが、マリオカートシリーズです。ナンバリング作品は全て各ハードで売上ベスト4に入っており、「出せば必ず売れる」タイトルとして圧倒的な存在感を示しています。しかし意外なことに、過去作はいずれもハードと同時発売したことはなく、ハードの普及を加速させるキラータイトルとして展開されてきました。そんな中Switch2のローンチソフト(ハード同時発売タイトル)として、ハードのスタートダッシュを担うこととなったのがシリーズ最新作『マリオカートワールド』です。長いマリカの歴史の中でも、最大級の期待を背負って開発された渾身の一作。そこに至るまでのマリオカートシリーズの変遷を、本動画では振り返ってみたいと思います。 いずれの作品も、各ハードのコンセプト・販売戦略と密接に結びついて開発されているので、その点にも着目していきます。
それまで群雄割拠だった家庭用ゲーム業界において、ファミコンを市場投下した任天堂。業界参入が遅れた後発メーカーながら、ファミコンは圧倒的なコストパフォーマンスで市場を席巻しました。そんな任天堂が、ファミコン後継機として満を持して展開したのが『スーパーファミコン』。 1990年に『スーパーマリオワールド』と『F-ZERO』という2本のソフトを携えてリリースされた新ハードは、瞬く間に人気を博しました。
スーパーマリオワールドの陰に隠れがちなF-ZEROですが、本作はスーファミの性能をアピールする目的で作られた重要な作品です。現実のF1にインスパイアされたネーミングの本作は、その名の通り超高速なレースを楽しめる一本。 それまでのレーシングゲームはアーケードでの展開が主流でしたが、これだけ高速なレースを家庭で楽しめるとあって、注目を集めました。
しかしF-ZEROは1人プレイ専用のタイトル。2本のコントローラーを差し込めるスーファミ向けに、対戦できるレースゲームが絶対に必要だと任天堂は考えていました。
そうして企画されることとなったF-ZEROの2人プレイ版ですが、この企画は早々に軌道修正を余儀なくされました。F-ZEROの超高速レースを2人プレイするのは、スーファミのスペックでは難しかったんですね。それならレーススピードを落とすしかないという話になり、スピードを落とすとなると「直線主体のF-ZEROコース」を「カーブ主体の新コース」に再設計する必要もあるだろう、という話になり、「カートレース」というコンセプトが徐々に固まっていきました。 カートだと運転しているキャラも画面に映るため、他のレースゲームとの差別化にもなりました。
しかしせっかくのカートレースなのに、見えるのはキャラの後ろ姿のみ。それではキャラ同士の見分けがつきにくい、という課題が浮き彫りになりました。そこで浮かんだのが、「いっそ任天堂の看板キャラであるマリオたちをドライバーにしてしまおう」という発想。そうして1992年、スーファミ発売から2年後にシリーズ第1作『スーパーマリオカート』がリリースされました。ちなみに、すでに開発が進んでいるゲームに対して後からマリオをあてがうという構図は、実は任天堂にとって常套手段。 過去にはファミコンの『夢工場ドキドキパニック』でも同じことをしていました。
さて、マリオカート最大の特徴は、なんといってもアイテムにありました。 たとえ下位でもアイテム次第で一発逆転を狙えるゲームデザインは、それまでレースゲームに興味の無かったカジュアル層を多く引き込み、スーファミ歴代4位の売上を叩き出しました。
その影響力はすさまじく、それまでリアルで高速なレースを突き詰めていたレースゲームジャンルに一石を投じました。本作の登場以降、似たようなデザインのフォロワーが数多く登場し、やがて新たなゲームジャンルを形成するに至りました。今やレースゲームと言うと、リアルを追求したドライビングシミュレーター路線と、カジュアル層から人気の「マリカ」路線の2つに大きく分かれています。
このように初代マリカは「スーファミの対戦レースゲーム」という当初のコンセプトを大きく飛び越え、新たなジャンルを切り開いたメガヒット作となりました。
スーファミから6年。任天堂が次に送り出したのが、次世代機・NINTENDO64でした。このハードのテーマは、ズバリ3Dゲーム。ローンチタイトルを務めた『スーパーマリオ64』は3Dアクションというジャンルを切り開いた歴史的な名作と評価されており、当時のゲーム界に衝撃を与えました。
この成功を受けて、任天堂は他の人気シリーズも次々に3D化していくようになります。その先陣を切ることになったのが、マリオカート64。64という新ハードが迎える初めての年末商戦に合わせて投入されることになった本作は、元々そこまで期待されていなかった前作と打って変わって、64普及の起爆剤として大きな期待をかけられました。その開発を任されたのは、前作でもディレクターを務めた「マリカの生みの親」こと紺野秀樹氏でした。 紺野氏の指揮のもと、「2D」・「2人対戦」だったゲームは、「3D」・「4人対戦」へと進化を遂げることになります。
技術的にとりわけ苦労したのは、3D化の部分でした。複数カートの順位が目まぐるしく移り変わるマリオカートにおいて、全てのオブジェクトを3D化するのはハードスペックの都合上難しかったそうです。しかし紺野氏にとってハード制約の悩みというのは、前作スーパーマリオカートでも経験したこと。スペック不足を逆手に取ったゲームデザインは、得意とするところでした。カート描画は2D、コース描画は3Dと、描画方法を巧みに使い分けることで、スペックに縛られることなく3D化を実現。 特にコースが3Dになったというのは非常に大きく、新たに高低差に富んだコースやショートカットが可能なコースも登場し、レースゲームとしての深みが増しました。
レースガチ勢向けのディープさと、アイテムによる一発逆転も可能なカジュアルさの両立に成功した本作は、64史上2位のセールスを記録。前作に引き続き、ハードを代表する名作となりました。
2001年に発売されたゲームボーイアドバンスは、11年前に発売されたスーファミを上回る性能を持った携帯ゲーム機。この性能を活かし、スーファミ時代の名作たち——『スーパーマリオワールド』や『ヨッシーアイランド』などが次々とGBAに移植されていきます。そうした流れの背景には、子どもたちに過去の名作を体験してもらい、将来の任天堂ファンになってもらうという長期的な戦略があったのかもしれません。
ともあれそうした流れの中で企画されたのが、マリカシリーズ3作目『マリオカートアドバンス』。GBAは2D表現に強いハードだったため、本作も2Dレースゲームとして開発されました。参考にされたのは、スーファミでリリースされた初代マリカ。新コースを多数収録した完全新作ながら、実際のプレイ感覚は、ほぼ初代マリカのリメイクといって差し支えないものでした。一方で、画面UIの構成や登場キャラのラインナップにはマリカ64の要素がしっかり取り込まれており、 いわば初代の操作感と64の世界観を掛け合わせた、良いとこ取りの一作でした。
開発を担当したのは、古くから任天堂ソフトの開発を担ってきた『インテリジェントシステムズ』(任天堂の子会社ではない)。当時は新ハード・ゲームキューブの開発が佳境に入っていたこともあり、任天堂本体はリソースが厳しく、外注に頼ったのだと思われます。このような背景から、本作では「GBAでもマリカを快適に遊べること」が開発方針として据えられ、新要素は控えめに抑えられました。ただし、通信ケーブルを用いた多人数プレイは携帯機ならではの特徴としてしっかりと盛り込まれています。誰か1人さえカートリッジを持っていれば最大4人での対戦可能とあって、マリカというシリーズの裾野を広げるのに本作は大きく貢献しました。 売上もGBA用ソフトの中で4番目のセールスを記録し、手堅い一作となりました。
マリカの変革を目指した3作品

スーファミ・64・GBAでリリースされた3作品によってマリカの基本が形作られたとすると、その後のGC・DS・Wiiで展開された次の3作品はマリカの変革を目指した作品たちでした。
まずマリカ4に相当する、『マリオカート ダブルダッシュ!!』から順番に紹介していきます。本作はNINTENDO64の次世代据置機・ゲームキューブからのリリース。前作・マリカアドバンスでは外注でのソフト開発となりましたが、本作からは任天堂本体による内製に戻りました。しかし初代と64を手掛けた「マリカの生みの親」こと紺野氏は参加せず。 その頃は他タイトルの開発に注力していたようです。
この紺野氏不在が影響したのか、マリカは4作目にしてゲームシステムが一変しました。本作が最初で最後となった、2人乗りシステムです。1人が運転を、もう1人がアイテムを操作するという、役割分担による協力プレイが採用されました。大きな変化だっただけに賛否は分かれましたが、この新システムによって、それまで8人だったキャラ数は20人へと大幅に増加。 また、8台のゲームキューブをLANでつなぐことで、最大8ペア16人での対戦も実現し、ゲームの規模が一気に拡大しました。
このように様々な面で実験的だった本作でしたが、セールスは引き続き好調。ゲームキューブソフト歴代2位の売上を達成しています。
DSといえば『ニンテンドーWi-Fiコネクション』というオンラインサービスを思い出す方も多いのではないでしょうか。実はこのサービス、DSが発売された1年後の2005年から開始した後発のサービスでした。そしてこの新サービスに対応した、一番最初の対戦ソフトこそ『マリオカートDS』。今では当たり前のオンラインプレイですが、その口火を切ったのは、実はマリカだったんですね。
そんなオンライン対戦が最大の特徴となったマリカDSでは、「マリカの生みの親」こと紺野氏が久々にカムバック。以降のナンバリングには全てプロデューサーとして参加しています。
その紺野氏の影響かは分かりませんが、本作で導入された新要素には後の定番になっていったものが多いです。例えばアイテムの「ゲッソー」や「キラー」が追加されたのも本作からですし、 「こうらカップ」や「このはカップ」といった過去作リメイクコースの収録が定着したのも本作からです。
一方で今作限りの新要素としては、「ミッションラン」という1人プレイ用モードも人気を博しました。指定のミッションをクリアしながらコース走破を目指す本モードでは、面の最後にボスが待ち構えており、こうらで撃退したり、競走したり、マリカならではのボス戦を楽しめました。
また、本作は凄まじいセールスを記録したことでも知られています。これまでのシリーズ4作品で最も売れたのはマリカ64の1000万本でしたが、マリカDSはその2倍以上の2400万ものセールスを記録。本作以降、マリカの売上本数はどんどんインフレしていくこととなります。
このように、マリカDSはシステム面でも売上面でも、シリーズの転機となった作品でした。
1億5000万台を売上げてゲーム史上最も売れた携帯ハードとなったニンテンドーDS。その勢いに乗った任天堂は、据置機でも1億台を超える大ヒットハード・Wiiをリリースしました。当時ゲーム業界はゲーム人口の減少によって苦境に立たされていましたが、任天堂は「Wiiリモコン」による直感的な操作を前面に押し出すことで、新ハードWiiの間口の広さを積極的にアピール。それまであまりゲームに触れてこなかった小さな子どもや年配の方々といった新規層の取り込みに成功しました。 こうした流れもあって新作マリカは、誰もが楽しめるタイトルである必要がありました。
Wii発売の1年半後の2008年、任天堂はマリカ6作目『マリオカートWii』をリリース。
本作の特徴は、なんといってもハンドル型のコントローラーでした。Wiiリモコンをはめ込んだ状態でハンドルを左右に切ることで、ゲーム内のキャラも一緒に左右に曲がる。 コントローラー操作が苦手なゲーム初心者にとっても、直感操作で楽しめるタイトルとなりました。
そして、マリカシリーズにとって転機となったもう一つの新要素がバイクの登場です。これもマリカWiiの目玉でした。カートとは異なる操作感のバイクの登場は、マンネリになりつつあったシリーズに新たな刺激をもたらし、ゲームプレイの幅を広げました。しかし、新要素というのは、得てしてバランス調整が難しいもの。マリカWiiのバイクでは、前輪を持ち上げて加速する「ウィリー」が可能でしたが、特に大会シーンでは特定キャラによるウィリーが横行し、ゲームバランス面には一定の課題が残りました。それでも本作は3700万本を売上げてWii史上2位のヒットとなっており、「間口の広いタイトルを目指す」という目標は達成されたと言えるでしょう。
このようにマリカWiiは、ハンドルコントローラーとバイクという新要素をもたらした一方で、一部調整が不十分な、賛否の分かれた作品となりました。
マリカ4~6に相当する3タイトルのリリースと並行して、マリカシリーズはゲームセンターにも進出しています。その名も『マリオカート アーケードグランプリ』。 アーケードから進化していったレースゲームの歴史ですが、マリカはスーファミで生まれてから15年後にアーケードへと逆輸入されていきました。
2005年から2017年にかけて4作品が生まれたアーケードシリーズですが、実はアーケードに強いナムコからの持ち込み企画。任天堂が許可する形で実現したマリカアーケードは、ペダルを踏んでハンドルで操作するマリカとあって、その迫力は家庭版を上回りました。『1』『2』そして3に相当する『DX』と続編が続いており、特にDXは10年以上前に稼働し始めたタイトルですが、今なお現役で楽しまれています。一方DXの後に登場した『VR』は、その名の通りVRでマリカを楽しめる異色の作品でした。 1プレイ1000円という強気な価格設定もあって設置店舗は限られていましたが、当時はインパクトのある一作として注目されました。
マリカの世界を広げた3作品

マリカを形作った初期3作品、そしてマリカの変革を目指した中期3作品。これらに続いて登場した『マリカ7』『8』『8DX』は、マリカの世界を広げた3作品だったと言えるでしょう。
まず紹介したいのが、ニンテンドー3DSより発売された『マリオカート7』。DSの後継機として2011年初めに市場投下されたニンテンドー3DSでしたが、本作マリカ7は3DS初の年末商戦に向けたキラータイトルとして企画されていました。つまり、発売延期が許されない、納期絶対のソフトだったんですね。にもかかわらず、他タイトルの開発遅延のあおりを受けて、マリカ7は当初予定していた開発スタッフを集めきれなかったと言います。そうした状況で声がかかったのが、任天堂のアメリカ子会社『レトロスタジオ』。『メトロイドプライム』シリーズで知られる実力派のゲーム開発会社ですが、マリカ7の開発が始まる少し前に別作品の開発が終わったところでした。こうした社内事情を受け、図らずも日米合作となったマリカ7。 当初は慣れない共同開発に戸惑っていたスタッフもいたそうですが、やがてワンチームで結束し、開発は順調に進められました。
このように、今までになかった開発体制ながら見事マリカの世界を拡張して見せた本作は、3DSタイトルで歴代1位の1900万本を売上げました。
1億台の大ヒットとなったWiiに対し、その後継機・WiiUはわずか1300万台のみと振るいませんでした。本ハードの苦戦ぶりは決算にも表れていて、発売年の2012年から3年間にわたって任天堂は営業赤字に転落しており、苦しい経営状況が続いていました。そんな状況の中、なんとか逆境を跳ね返そうと奮闘したのが、2014年にリリースされたWiiU向けソフト『マリオカート8』。 一本のソフトで状況をひっくり返すのは難しくとも、出せば必ず売れるソフトとして、経営に貢献することを求められていました。
そんなマリカ8のセールスポイントは、何よりもまず美麗なグラフィック。これまでの任天堂ハードではスペックが足りず実現できなかったHD画質が、ようやく実装されました。実はこのHD化、プレイヤーのみならず、開発陣にとっても念願の新要素でした。ゲームクリエイターであると同時に、エンジニアでもある開発陣にとって、技術の進歩は大きなモチベーション。マリカチームは本作をシリーズの集大成と位置づけ、マリカアーケードで懇意だったバンダイナムコも開発に巻き込みながら、過去作の要素をふんだんに盛り込んでいきました。
そして、新たな挑戦として導入されたのが、反重力エリア。このエリアではカートが宙に浮き、滑るように走行。 敵とぶつかれば「スピンターボ」が発生して加速するという仕組みで、接触を前提とした全く新しい駆け引きが生まれました。
さらに本作では、マリカシリーズ初のダウンロードコンテンツも展開されました。『どうぶつの森』や『ゼルダの伝説』をモチーフにした新コースが登場し、しずえさんやリンクといった他作品のキャラも参戦。 まるでスマブラのようなクロスオーバーが楽しめる作品として話題を集めました。
このように、過去の集大成でありながら新たな進化も遂げたマリカ8は、WiiUという苦戦ハードにおいて850万本という歴代1位のセールスを記録。ハード所有者の半数以上が手にした計算となり、その評価の高さを数字が物語っています。
2017年、WiiUの失敗を挽回すべく投入された新ハード・Nintendo Switch。その発売から2カ月後、ローンチの熱がひと段落したタイミングで、任天堂は『マリオカート8 デラックス』を投入しました。WiiU時代に高く評価されながらも十分にプレイされなかったマリカ8を、普及期のSwitchで改めて届け直す――。これは、既存タイトルの価値を最大化するという、任天堂らしい巧みな戦略でした。
本作では『8』でDLCとして配信されたしずえさんやリンクは最初から登場したほか、新要素としてスプラトゥーンとのコラボも実現。前作で不評だったバトルモードのコースにテコ入れする形で、スプラモチーフの専用コースが新たに登場し、更にインクリングも新キャラとして参戦しました。また、アイテムボックスの同時所持が可能になるなど、細かなルール調整も随所に施されており、ただでさえ集大成だったマリカ8はもう一段洗練されていきました。
しかしいくら完成度が高くても、ずっと同じコースを走り続けていれば、やがて物足りなさを感じ始めてしまいます。そんな声に応えるかのように発表されたのが、全48コースという超大規模の追加コンテンツ。まさにデラックスの名にふさわしいこの拡張では、新規層とシリーズファンの両方が楽しめるコースを目指して、初代スーファミからWii Uまで各世代の名コースが再構築されました。既にSwitch定番ソフトとして定着していた8DXでしたが、このDLCによってさらに息の長いタイトルへと成長。最終的にはSwitchが現役だった8年の間に6800万本を売上げ、シリーズ最大のヒット作になった本作は、マリカの枠を越えてゲーム史にその名を刻む一本となりました。
ロングセールスの裏で、マリオカートシリーズはSwitchの外にも展開されていきました。まず2019年にリリースされたのが、スマホ向けタイトル『マリオカートツアー』。本作では、世界各国の都市をモチーフにしたコースが登場し、シリーズにこれまでなかった「現地を走る」ような感覚が加わりました。これらの都市コースは、後に8DXのDLCとして本編にも逆輸入されていきます。
続いて2020年には、『マリオカート ホームサーキット』が登場。AR技術を活用し、現実のラジコンを家の中で操作して、自宅そのものをサーキットに変えるという「体験型マリカ」が実現しました。このアイデアは、AR分野に強い海外のゲーム会社から持ち込まれたもので、任天堂はその発想力を評価して正式に商品化。シリーズ本編とは異なるアプローチながら、マリオカートというシリーズの広がりを象徴する存在となりました。
さらに2021年には、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにてマリオカートをテーマにしたアトラクションがオープン。仮想空間と現実の映像が連動するこのレース体験は、マリカの世界観をリアルに体感できるとあって、国内外の来場者から高い評価を集めています。
このように、スマートフォンや現実空間への展開など、シリーズは多様な形で広がっていきましたが――2025年、マリオカートは再び据置ハードへと帰ってきます。Switch2ローンチタイトルとして発表された『マリオカートワールド』は、シリーズ第9作にして初の「オープンワールド型マリカ」。ひと続きの大きなフィールドを自由に走り回り、レースが自然発生するという新しいゲームデザインは、これまでのシリーズとは一線を画す構造です。そして何より、本作はシリーズで初めて新ハードの「ローンチタイトル」という使命を託された作品でもあります。シリーズ最大の期待を背負った最新作マリオカートワールドでは、どのような歴史をたどることになるのか――その走り出しは、もうすぐです。